蕪村(ぶそん)の俳詩。1777年(安永6)の春興帖(しゅんきょうちょう)(春になって門下知友に配る句帖)『夜半楽(やはんらく)』に「澱河歌(でんがのうた)」「老鶯児(ろうおうじ)」とともに三部作として公表された。あでやかな藪入(やぶいり)娘が大坂から淀川(よどがわ)沿いの堤をさかのぼって、母と弟の待ちわびるわが家へとたどる道行は、左岸毛馬(けま)村に生まれ育った郷愁の詩人の代表作である。この「歌曲十八首」は「やぶ入や浪花(なには)を出でて長柄(ながら)川」の発句に始まり、友人太祇(たいぎ)の藪入句に終わる。その間、楽府体(がふたい)漢詩形、漢文訓読体、破調句などの雑体詩形を連鎖させる構成は、独創的な連作叙事詩といえる。若き日の叙情詩「北寿(ほくじゅ)老仙をいたむ」(1745)とともに注目すべき詩業であり、晩年のこの曲は明(みん)の徐禎卿(じょていけい)の楽府体連作詩「江南楽八首内(妻)に代りて作る」および服部南郭(はっとりなんかく)の「潮来(いたこ)詞二十首」などを参考として創作された。
[清水孝之]
『安東次男著『日本詩人選18 与謝蕪村』(1970・筑摩書房)』▽『清水孝之校注『新潮古典文学集成 与謝蕪村集』(1979・新潮社)』
俳体詩。与謝蕪村作。1777年(安永6)春刊の《夜半楽(やはんらく)》に発表。発句体,絶句体,漢文訓読体と雑多な短詩形を交互に18首連ね,やぶ入りの少女が淀川の毛馬(けま)堤を家郷へたどる様を描いたもの。実は蕪村のやみがたい望郷の念が託されており,その豊潤な詩情,高い格調,確かな構成力は,支考流の仮名詩の域を脱し,独創的な長詩となった。漢詩,和漢俳諧の流行が背後にあり,清水孝之は明の徐禎卿(じよていけい)の楽府体連作《江南楽八首》の影響を指摘する。また郊外自然の多彩な描出は,盛行しはじめた郊外散策の風習と関係があろう。《北寿老仙をいたむ》と並ぶ蕪村文芸の傑作で,近代詩人の高い評価を得ている。
執筆者:田中 道雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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