東国通鑑(読み)とうごくつがん

改訂新版 世界大百科事典 「東国通鑑」の意味・わかりやすい解説

東国通鑑 (とうごくつがん)

朝鮮三国時代から高麗末までを記した李朝前期の歴史書。徐居正らにより,1484年(成宗15)に成る。外紀1巻,本文56巻。巻首の外紀は,檀君箕子衛満の諸朝鮮,漢の四郡,三韓などを略述し,本文は三国時代から高麗末までを編年体で記す。内容的には,既存の《高麗史節要》(1452),《三国史節要》(1476),その他の中国の関係史料などをそのまま利用したにすぎず,しかも誤りを含むので,史料としてはあまり重視されていない。ただ,李朝成立以前の歴史を統一的に叙述したこと,叙述の基礎を朱子学的史観に置いたことなどは史学史的に注目される。日本では,1667年徳川光圀が京都で刊行させて以後普及し,江戸時代を通し朝鮮史知識の源泉として重視された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東国通鑑」の意味・わかりやすい解説

東国通鑑
とうごくつがん
Tongguk-t'onggam

朝鮮の史書。 56巻,外紀1巻。朝鮮王朝 (李朝) の世祖のとき着手し,成宗 15 (1484) 年に完成した。徐居正らの撰で,古朝鮮から高麗末までの歴史を編年体で叙述したもの。巻首外紀は三韓まで。本紀は三国時代から高麗時代末までを記しているが,他書の引用や誤りが多く信憑性が薄い。しかし本書は朱子学的な立場で叙述され,体系的で便利なところから朝鮮王朝時代に基本的史書の一つとなり,日本でも江戸時代初期にもたらされ,明治まで重んじられた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「東国通鑑」の解説

『東国通鑑』(とうごくつがん)

朝鮮の三国および高麗(こうらい)時代の編年体の通史。1484年徐居正(じょきょせい)ら選。56巻,外紀1巻。『三国史記』『三国遺事』や中国側史料をとり,便利な通史である。

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世界大百科事典(旧版)内の東国通鑑の言及

【渤海】より

… ついで李朝になると,《高麗史》(1451),《高麗史節要》(1452)などには,多くの渤海人の亡命記事がみえ,また王建の契丹との絶交を義挙と賞賛している。ところが,《東国通鑑》(1484)になると,〈契丹が渤海を裏切って滅亡させたことなど,どうしてわが国と関係があるのか〉といって,王建の行為を非難する意見が示されるにいたった。これは李朝の北進策の後退,現実に旧渤海領の大半が女真など他民族の支配下にあることなどによる渤海への関心の低下を反映しているものと思われるが,以後《東国通鑑》の評価が支配的になっていく。…

※「東国通鑑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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