朝鮮の始祖神の号。名は王倹。高麗時代に編まれた《三国遺事》では,檀君王倹をどの王朝の始祖王ともしないで,朝鮮全土の開国神・始祖神としてとりあげた。この神話の要旨は,帝釈桓因(たいしやくかんいん)の子桓雄が熊女と結婚し,檀君王倹が生まれた。檀君は尭帝即位50年(異説多し)に建国し,平壌城に都したが,のちに阿斯達に遷都し,1500年間朝鮮をおさめた。箕子(きし)が朝鮮に封ぜられたので,檀君は隠棲して,阿斯達の山神になったという。この神話には,儒教,仏教,道教など後世の潤色も多いが,北方形の熊信仰・シャマニズムの入信儀礼と,南方形の聖林降臨信仰・峠の聖地信仰などとの結合が基本的な要素となっているとみられる。檀君王倹の前身は平壌地方の固有神王倹仙人で,王倹の名は衛氏朝鮮の王都の地名王倹によると推測される。《三国遺事》が檀君を朝鮮全土の始祖神とした理由は,モンゴルの侵略や高麗王朝の江華島への逃避,元朝への帰順に反対し,各地の義兵や三別抄の活動を精神的に支援する反元自立の民族意識による。
檀君信仰は初め民間信仰であったが,高麗末には地方豪族や貴族にも信仰されるようになり,朝鮮王朝(李朝)の国号採用にも,箕子朝鮮とならんで檀君朝鮮の国号が有力な根拠とされた。1429年には世宗が檀君を高句麗始祖東明王(朱蒙)廟に合祀し,以後国家的な祭神となった。19世紀末,民族意識の高揚につれ,檀君はふたたび朝鮮民族の祖神として信仰され,大倧(たいそう)教や檀君教がおこり,現在なお韓国の有力な固有宗教となっている。また,韓国では1961年まで檀君紀元(西暦年に2333年を加算)を使用していた。
→古朝鮮 →朝鮮神話
執筆者:井上 秀雄
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[二つの開国神話]
朝鮮文化の完成した時期,その文化要素に〈大〉文化と地域文化との融合がはかられたことを示す好個の事例として,朝鮮の開国神話をあげることができる。朝鮮には檀君神話と箕子神話との二つの開国神話があるが,これらは高麗時代に成立したもので,前者は民間信仰を,後者は儒教を背景にしたものである。檀君神話は中国尭帝即位50年に,天神の子と熊の化身とのあいだに生まれた檀君が平壌城で建国するが(前2333年が檀君紀元),1500年後,箕子が朝鮮に封ぜられたので,山神になったという。…
…妙香山はこの3道の接点に位置し,樹木がうっそうとした山容は秀麗で,朝鮮の名山の一つとされている。朝鮮の建国神話の主人公檀君の生誕地といわれる檀君窟がある。山麓の普賢寺は高麗時代創建とされる古寺で,大小40余の建築物からなる規模は朝鮮五大寺の一つに数えられる。…
※「檀君」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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