石垣りん(読み)イシガキリン

デジタル大辞泉 「石垣りん」の意味・読み・例文・類語

いしがき‐りん【石垣りん】

[1920~2004]詩人東京の生まれ。高等小学校卒業後、銀行勤務のかたわら詩作を続ける。作品に「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」など。「表札など」で H氏賞、「石垣りん詩集」で田村俊子賞、「略歴」で地球賞受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石垣りん」の意味・わかりやすい解説

石垣りん
いしがきりん
(1920―2004)

詩人。東京生まれ。高等小学校卒業後、日本興業銀行に就職、55歳の定年まで勤務した。生家は薪炭商で、生活がとくに困窮していたわけではないが、進学しなかったのは、自分で稼いだ金で文学を勉強してみたいという考えからであった。『女子文苑(ぶんえん)』の選者福田正夫に師事、その投稿仲間と同人誌『断層』(1938)を出し、詩と小説を発表した。第二次世界大戦後は職場の組合活動にも参加しながら詩作に集中、庶民生活を凝視するなかで、反戦の思いをライフモチーフとした詩集『私の前にある鍋(なべ)とお釜(かま)と燃える火と』(1959)で注目され、第二詩集『表札など』(1968)で第19回H氏賞を受賞、詩壇での位置を確実なものにした。生活の場における違和感、実在の痛みを研(と)ぎ澄まされた感覚で表出しており、余人のまねのできない世界を構築した。総合詩集『石垣りん詩集』(1971)で田村俊子(としこ)賞を受賞、戦後の代表的な女流詩人として高く評価されることになるが、さらに第三詩集『略歴』(1979)、第四詩集『やさしい言葉』(1984)と、詩境を深めた。その特異性を伊藤信吉は「日常語、平常語で感情の動態を理論的に構成する。その逆に日常語、平常語で理論の核を解きほぐす」と評し、水野友紀子は「この詩人のおもしろさの一つは、表向きに映る現象の向こう側にまでその洞察力が到達して、その底のところから反対に自分が立っている場所を照射するところにある」という。一面的なうたでない複眼把捉(はそく)した詩は、単純にみえて複雑、外柔内剛の人間の真の強さ、やさしさを教えてくれる。茨木のり子と戦後女流詩人の双璧で、多くの教科書に「シジミ」ほかが採択された。鋭い切れ味のエッセイ集『ユーモアの鎖国』(1973)、『焔(ほのお)に手をかざして』(1980)、『詩の中の風景』(1992)も注目された。

[首藤基澄]

『『現代詩文庫46 石垣りん詩集』(1971・思潮社)』『『詩集 やさしい言葉』(1987・花神社)』『『詩の中の風景――くらしの中によみがえる』(1992・婦人之友社)』『『石垣りん詩集 表札など』(2000・童話屋)』『『石垣りん詩集 私の前にある鍋とお釜と燃える火と』(2000・童話屋)』『『石垣りん詩集 略歴』(2001・童話屋)』『『ユーモアの鎖国』『焔に手をかざして』『夜の太鼓』(ちくま文庫)』『大岡信・谷川俊太郎編『現代の詩人 石垣りん』(1983・中央公論社)』

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百科事典マイペディア 「石垣りん」の意味・わかりやすい解説

石垣りん【いしがきりん】

詩人。東京都生れ。高等小学校卒業。1934年に14歳で日本興業銀行に就職して家族の暮らしを支え,詩作を続けながら定年(1975年)まで勤務した。1938年同人雑誌《断層》創刊に参加。日常語を用い,働く女性を描いた詩や,戦争体験に基づく社会性のある作品を発表した。68歳まで《歴程》同人。主な著書に詩集《私の前にある鍋とお釜と燃える火と》(1959年),《表札など》(1968年。H氏賞受賞),《石垣りん詩集》(1971年。田村俊子賞受賞),エッセー集《ユーモアの鎖国》(1973年),《焔に手をかざして》(1980年),《夜の太鼓》(1989年)などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「石垣りん」の解説

石垣りん いしがき-りん

1920-2004 昭和後期-平成時代の詩人。
大正9年2月21日生まれ。昭和9年日本興業銀行に入社,50年までつとめる。その間の34年「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」を発表,社会と生活をみすえた詩風で注目された。44年「表札など」でH氏賞,46年「石垣りん詩集」で田村俊子賞。54年「略歴」で地球賞。平成16年12月26日死去。84歳。東京出身。随筆集に「ユーモアの鎖国」。

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367日誕生日大事典 「石垣りん」の解説

石垣 りん (いしがき りん)

生年月日:1920年2月21日
昭和時代;平成時代の詩人
2004年没

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