社僧(読み)シャソウ

デジタル大辞泉 「社僧」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐そう【社僧】

神仏習合時代に、神宮寺じんぐうじにいて仏事をつかさどった僧。別当検校けんぎょう勾当こうとうなどの階級があり、神職上位にいて権力を振るったこともある。奈良末期に始まり、明治元年(1868)廃止宮僧くそう

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精選版 日本国語大辞典 「社僧」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐そう【社僧】

  1. 〘 名詞 〙 神社に所属し、僧形(そうぎょう)をもって仏事をとり行なった者の称。その居住する寺院境内に建立し、別当寺(べっとうじ)あるいは神宮寺(じんぐうじ)という。階級には別当、検校、勾当などがあり、本地垂迹(すいじゃく)説の流通にしたがって勢力を増し神官の上位に立って一社を支配するようになったものもある。奈良朝末期に始まるとされ、明治政府によって明治元年(一八六八)に廃止された。
    1. [初出の実例]「浄土宗の学生の俗有りけり。〈略〉社僧(シャソウ)・神官等憤り申して」(出典:米沢本沙石集(1283)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「社僧」の意味・わかりやすい解説

社僧 (しゃそう)

神宮寺に住し仏事を修する僧侶。供僧(ぐそう),宮僧(くそう),神僧ともいう。奈良朝ころより神仏習合思想によって神社に仏寺を建て,これに別当,検校(けんぎよう),勾当(こうとう),専当執行など多数の職階から成る僧侶を住せしめ,神官は別当を長とする僧侶の支配をうけた。このいわゆる宮寺制の組織が,平安朝には諸社に成立した。その早いものの例としては石清水(いわしみず)八幡宮において,10世紀前期神宮寺である護国寺第4代別当会俗のときから,その子孫である紀氏が別当を世襲し公に妻帯する慣習ができた。27代光清の子に勝清,成清があって善法寺,田中の両別当家に分かれ,とくに前者はまた多くの流派に分かれ繁栄した。院政期より政治的にも権力を振るったのは熊野別当家で,15代別当長快のとき上皇の熊野参詣が始まり,彼は法橋,ついで法印に叙せられ初めて僧綱(そうごう)の位に就いた。これよりその門流は本宮,新宮両家に分かれ,それぞれ源氏平氏と姻戚関係を結んで政界に勢力を伸ばした。このように,その権威は神職を圧するほどになったが,明治維新の神仏分離によりその跡を絶った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「社僧」の意味・わかりやすい解説

社僧
しゃそう

神宮寺(じんぐうじ)で仏事を行う僧。宮僧(くそう)、神僧(じんそう)ともいう。社僧には、別当(べっとう)(神宮寺の長官)、検校(けんぎょう)(衆僧の総括と事務の監督)、勾当(こうとう)(別当の補佐)、専当(せんとう)(勾当の下で社務を担当)、執行、学頭、執事などの別があった。また春日(かすが)社や八幡宮(はちまんぐう)では五師(または御師(おし))、祇園(ぎおん)社では目代(もくだい)など特別の役職が設けられた。平安時代以降、神社に付属する神宮寺の増設されるのと並行して、全国の諸社に社僧が置かれるようになったが、明治の神仏分離令によってその制度は廃止された。

[山折哲雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社僧」の意味・わかりやすい解説

社僧
しゃそう

本地垂迹説 (ほんじすいじゃくせつ) に基づいて発展した神社付属の寺において,仏事を修して神社に奉仕する僧。奈良時代にすでに神宮や諸大社付属の寺に住していたが,平安時代になると一般化した。江戸時代末期まで大いに勢力を張っていたが,明治維新の神仏分離令によって勢力は衰退した。

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世界大百科事典(旧版)内の社僧の言及

【僧】より

…また民衆に対して,弁舌たくみに譬喩をまじえながら仏法を平易に説く唱導師,説法師がおり,村々を布教してまわる遊行僧,化俗(けぞく)法師とよばれる僧が活躍した。南北朝以来,造像を目的とした邑義,慧遠の白蓮社に始まるといわれる法社などの信仰団体が各地に結ばれ,その教化指導に当たる僧を邑師,社僧といった。こうした教化僧の活動によって,仏教は中国社会に深く浸透した。…

※「社僧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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