古代・中世の官人,職員,荘官の一。本来は〈専当する〉すなわち〈専ら事に当たる〉の意味で用いられ,奈良時代の用例はすべてこれである。平安時代になると造東大寺所など官寺の造営・修理を行う造寺所の職員として〈造寺専当〉〈造寺所専当〉〈専当〉などの名が,勾当,知事などとともに現れる。その後造寺所の活動が衰退する11世紀中ごろから12世紀になると,大寺院の寺院組織改革・整備にともない,この専当は寺院の政所や公文所,修理所などの下級職員として吸収・組織されていった。彼らは別当や三綱の命令をうけ,寺内や寺領荘園などの経営に従事し,鎌倉時代以降になると公人(くにん)とも呼ばれた。一方,9世紀後半ごろから荘園や国衙領の現地の役人の名称として専当の用例が現れる。荘官としては別当や下司,田所などより下位であった。鎌倉時代になると,この用例は見られなくなる。
執筆者:稲葉 伸道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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