共同通信ニュース用語解説 「里親制度」の解説
里親制度
親の死亡や虐待などから、家庭での養育が困難な子どもを里親が育てる制度。虐待による影響や心身に障害があり、特に配慮が必要な子どもを預かる「専門里親」、養子縁組を前提とした「養子縁組里親」、親族が育てる「親族里親」、それ以外の一般的な「養育里親」の4種類がある。都道府県知事や政令指定都市の市長らが認定し、子どもの生活費や教育費を支給している。
更新日:
出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
親の死亡や虐待などから、家庭での養育が困難な子どもを里親が育てる制度。虐待による影響や心身に障害があり、特に配慮が必要な子どもを預かる「専門里親」、養子縁組を前提とした「養子縁組里親」、親族が育てる「親族里親」、それ以外の一般的な「養育里親」の4種類がある。都道府県知事や政令指定都市の市長らが認定し、子どもの生活費や教育費を支給している。
更新日:
出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
子を養育するべき責務がある者の死亡,行方不明,長期にわたる疾病,収監あるいは子への虐待などの理由によって,子が保護されない状況が見られる場合に,子を家庭に引き取ってその養育を目的とする制度(児童福祉法27条1項3号)。子の保護を目的とする制度のなかで,施設へ通う型,施設養育型とならぶもの。子を家庭で養護する点は養子制度と似ているが,里親里子間に法的親子関係は発生しない。
→里子
明治初年より捨子,孤児など保護を必要とする子は,行政機関により家庭に委託養育されていた。東京では,市訓令(1895)によって,東京養育院など保護施設で生活している子を里子として委託養育する手続があった。しかし,救護法(1932)は施設で養育されている子を里子とすることを禁じたので,里親制度は活用されなかった。この禁止は37年に解かれたが,里親制度の本格的な展開は児童福祉法(1947)の制定まで待たなければならなかった。48年厚生事務次官通知〈里親等家庭養育の運営に関して(家庭養育運営要綱)〉によって,里親制度は児童相談所を中心として運用されることになった。そして,里子の委託は,自治体および〈家庭養護促進協会〉などの民間団体の協力を得た自治体によってなされてきている。ただし,当事者が合意によって行う子の委託養育もあって,公的機関がまったく関与しないため子の利益を損なう危険があるといわれている。
現行制度は,1987年厚生事務次官通知〈里親等家庭養育の運営について(里親等家庭養育運営要綱)〉にもとづいて運用されている。その基本原則は,篤志家だけでなく普通の人でも里親になれるように制度を整備していくというものであり,里親の認定事務の簡素化,認定基準と現代社会の実態との整合,里親里子の支援の拡大や保護の充実,などが強調されている。新たな原理にもとづいた里親は,以下の型に大別することができる。
(1)養子縁組を目的とする里親 未成年養子縁組をする場合,縁組前に養親子の適合可能性を判断する手続は現行法にない。そこで,縁組前の試験期間として里親制度が利用されている。また,特別養子の場合,養育能力を判断するために必要であるとして養親希望者は里親になるよう奨励されている。(2)養育を目的とする里親 保護を必要とする子を家庭に引き取って養育するもので,長期ならびに短期のものがある。前者は,養子縁組はとれないが長期にわたる子の養育を目ざし,後者は子が養育能力を回復した実親のもとに帰るまでの比較的短期の養育を目的とするものである。里親制度を一層活用するために,自治体のなかには独自の制度を用意するところがあり,例えば,東京における〈養育家庭制度〉では,養子縁組をしないことを明らかにした上で,長期の養護をする里親の認定手続を整備し,里子収養に必要な経済的支援を用意するなど,里親制度の活性化が図られている。また,神戸や大阪の〈家庭養護寮〉は,子の養育について専門知識をもつ里親夫婦のもとに少人数の里子が生活することによって子の福祉を実現しようというものである。さらに,短期の里親制度として,〈3日里親〉〈家庭保育制度〉〈家庭福祉員制度〉を挙げることができる。(3)同居児童届出・保護受託者(職親) 前者では,子の保護の観点から,18歳未満の子(4親等内の子を除く)を,親権を行う者もしくは後見人から離して,自己の家庭に3ヵ月(乳児の場合は1ヵ月)以上同居させる者は,自治体の長へ届出をしなければならない。また,後者は,義務教育を終了した子に保護者がいない場合,社会生活への適用と自立能力を育成する目的で子の養育を委託する制度である(児童福祉法27条,30条,精神薄弱者福祉法16条1項3号)。
都道府県知事は,里親を希望する者からの申請があると,里親が子の養育に適格かどうかを調査し,子の養護環境として適切であると判断すると里親として承認・登録する。かつては里親資格をもたなかった〈ひとり親〉あるいは〈共働き夫婦〉でも,子の養育環境として適切であると判断されると,登録可能となった。登録された里親は,子の養育に関する研修や指示を受け,また,5年に一度再認定の手続をとらなければならない。一方,里子として養護する必要のある子には,都道府県知事は登録された里親のなかから適切な者を選んで,養護委託の措置をとることができる。この場合,里親里子の生活を支援するために,教育,医療,生活に必要な措置費ならびに里親への手当が支給される。ただし,措置費は,里子本人または扶養義務者から徴収される場合もある(児童福祉法56条)。また,子の健全な発育に必要な場合には,他の措置(例えば,障害のある里子の児童福祉施設の通所利用など)も重ねて行えるほか,里親は税制上でも扶養控除が認められる。そして,里子の適切な養護を実現するために,都道府県知事は,里親へ養護に関しての指示をし養護の報告を求めることできる(児童福祉法30条の2)。里親里子関係は,里子が18歳になった場合,里親との養子縁組がなされた場合,人間関係が悪化した場合,要保護状況が解消した場合,措置は解除される。
里親は,子に対して親権を行使することはできないが,措置により子の養護を委ねられた者として,里子の養育をめぐる権利義務を有すると解される。また,里親は保護者としての地位を有する(児童福祉法6条,少年法2条)。里親里子関係は,措置によるので公的関係との見方がある一方で,子の委託養育契約であるとの解釈もあり,里親の法的地位は不明確である。したがって,実親から子の引取り請求が出された場合には,それが子の福祉に反する場合でも,里親は対抗できない。なお,里子の保護を実現するためには,里親に後見人としてあるいは親権者同様の法的地位を認めるべきであるとの主張もある。
里親制度は,子に家庭的養護を提供するという特色があると同時に,施設による養護より経済的負担が軽いという利点あり,その社会的役割が期待されている。しかし,地域によって登録里親の数や措置される里子は多様である一方で,里親に養育されている里子は施設で生活する子の1割にも満たない現状が問題視されている。そのほかにも,(1)子育てに対する社会の見方が変化している現代社会において里親を希望する家庭がどれほど確保できるか,(2)養護のみを目的とする里親をどのように確保するか,(3)養子縁組手続と里親による養護手続とを明確に分ける必要はないか,(4)里親の法的地位を里子保護の観点から強化するべきではないか,(5)里子と実親との交流をどのように維持するか,(6)里子・里親・実親の人間関係をどう調整するか,(7)里親を専門家として位置づけるか,(8)里子の養護措置年齢を20歳まで上げる必要はないか,(9)国際化のなかで里子養護をどう活用するか(子どもの権利条約20条の3参照),などの問題点が指摘されている。
執筆者:南方 暁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
家庭環境にめぐまれない児童等に、その人格の完全かつ調和のとれた発達のため、温かい愛情と正しい理解をもった家庭を与えることにより、児童の健全な育成を図ることを目的とする制度(里親制度運営要綱)。児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく。2005年度(平成17)から児童福祉法に里親の定義(第6条の4)が設けられており、同法では、要保護児童を養育することを希望する者、養子縁組によって養親となることを希望する者等のうち、都道府県知事が児童を委託する者として適当と認める者を里親としている。里親の種類には、養育里親、専門里親、養子縁組里親、親族里親がある。
2014年度末時点の登録里親数は9949人、児童が委託されている里親数は3644人、里親に委託されている児童数は4731人となっている(平成26年度福祉行政報告例)。日本では、要保護児童の大半が児童養護施設に保護されているが、施設ではきめ細かい心のケアを行うことはむずかしく、豊かな愛情と正しい理解をもった家庭のなかで養育する里親の必要性は高まっている。
2002年の改正では、児童虐待が深刻化してきていることへの対策の一環として、虐待等により心身に有害な影響を受けた児童を養育する「専門里親」制度が創設された。また、要保護児童を三親等以内の親族が養育する「親族里親」制度も設けられ、制度の拡充が図られた。また、2011年には「里親委託ガイドライン」が策定され、社会的養護においては施設養護よりも里親委託を優先する原則が明記された。里親委託を推進する政策により、少しずつではあるが里親および委託されている児童数は増加する傾向にある。なお、里親の認定を受ける場合には、居住地を管轄する児童相談所に申請し、研修・審査を受けることになっている。
[横山和彦・岩永理恵 2016年7月19日]
『厚生省児童家庭局編『児童福祉三十年の歩み』(1978・日本児童問題調査会)』▽『相澤仁・柏女霊峰・澁谷昌史編『子どもの養育・支援の原理――社会的養護総論』(2012・明石書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加