長田弘(読み)オサダヒロシ

デジタル大辞泉 「長田弘」の意味・読み・例文・類語

おさだ‐ひろし〔をさだ‐〕【長田弘】

[1939~2015]詩人。福島の生まれ。早稲田大学在学中より詩誌の編集に携わり、昭和40年(1965)第一詩集「われら新鮮な旅人」を発表。親しみやすく平易な言葉で、現代社会のありようを描いた。「世界はうつくしいと」で三好達治賞、「奇跡―ミラクル―」で毎日芸術賞受賞。他に詩集「幸いなるかな本を読む人」など。詩作ほか、評論、児童文学翻訳など幅広く活躍した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長田弘」の意味・わかりやすい解説

長田弘
おさだひろし
(1939―2015)

詩人、評論家。福島市生まれ。早稲田(わせだ)大学独文科卒業。在学中に詩誌『鳥』を創刊。『地球』『現代詩』『詩と批評』などに加わり、1965年(昭和40)に第一詩集『われら新鮮な旅人』を刊行。安保闘争から全共闘運動という政治的季節を背景に、詩人自らの青春が重ね合わされている。苛立(いらだ)ちや焦燥感に襲われ、それでも希望や連帯を諦(あきら)めない、やさしくあることの困難さを呟(つぶや)き、不透明でざらついた時代感触を映しとめており、1960年代におけるみずみずしい詩的達成をみた。1971~1972年、アメリカのアイオワ州立大学国際創作プログラム客員詩人。おもな詩集に『メランコリックな怪物』(1973)、『言葉殺人事件』(1977)、『深呼吸の必要』(1984)、『食卓一期一会』(1987)、『世界は一冊の本』(1994)、古今25人の音楽家を扱った連作詩編『黙(もく)されたことば』(1997)、詩文集『記憶のつくり方』(1998。桑原武夫学芸賞)、『一日の終わりの詩集』(2000)など。評論活動も目覚ましく、エッセイ・評論集として『探求としての詩』(1967)、『二重の思考――詩と詩でないもの』(1969)、『抒情(じょじょう)の変革』(1970)、『単独者の言葉』(1973)、『現代詩の戦後――定本抒情の変革』(1974)、『私の二十世紀書店』(1982。毎日出版文化賞)、『心の中にもっている問題――詩人の父から子どもたちへの45篇の詩』(1990。富田砕花(さいか)賞)、『詩は友人を数える方法』(1993)、『詩人の紙碑』(1996)、『アメリカ心の歌』(1996)、『本という不思議』(1999)、『子どもたちの日本』(2000)、『すべてきみに宛(あ)てた手紙』(2001)、『読書からはじまる』(2001)など。対話集では、鶴見俊輔安江良介(1935―1998)、谷川俊太郎などと語り合う『対話の時間』(1995)、江國香織(えくにかおり)(1964― )、落合恵子(1945― )ら4人の作家との対話集『本の話をしよう』(2002)など。20世紀以後の詩人92人92編(日本では中島敦、金子光晴ら、外国では、オーデン、ボルヘスなど)を選んだアンソロジー『大人の本棚 本についての詩集』(2002)や、『ねこに未来はない』(1971)などの小説、『ねこのき』(1996)、『森の絵本』(1999。講談社出版文化賞絵本賞)などの絵本、戯曲やラジオドラマも手がけ、実に多数の著作がある。1991年(平成3)には、『深呼吸の必要』『心の中にもっている問題』等の業績が評価されて路傍の石文学賞を受賞した。

[高橋世織 2016年7月19日]

『『われら新鮮な旅人』(1965・思潮社)』『『探求としての詩』(1967・晶文社)』『『現代詩文庫13 長田弘詩集』『現代詩文庫146 続・長田弘詩集』(1968、1997・思潮社)』『『二重の思考――詩と詩でないもの』(1969・晶文社)』『『抒情の変革――戦後の詩と行為』(1970・晶文社)』『『ねこに未来はない』(1971・晶文社)』『『単独者の言葉』(1973・筑摩書房)』『『メランコリックな怪物』(1973・思潮社)』『『現代詩の戦後――定本抒情の変革』(1974・晶文社)』『『帽子からの電話です』(1974・偕成社)』『『言葉殺人事件』(1977・晶文社)』『『私の二十世紀書店』(1982・中央公論社)』『『深呼吸の必要』(1984・晶文社)』『『食卓一期一会』(1987・晶文社)』『『心の中にもっている問題――詩人の父から子どもたちへの45篇の詩』(1990・晶文社)』『『詩は友人を数える方法』(1993・講談社)』『『世界は一冊の本』(1994・晶文社)』『『対話の時間』(1995・晶文社)』『『詩人の紙碑』(1996・朝日新聞社)』『『アメリカ心の歌』(1996・岩波書店)』『『ねこのき』(1996・クレヨンハウス)』『『黙されたことば』(1997・みすず書房)』『『記憶のつくり方』(1998・晶文社)』『『本という不思議』(1999・みすず書房)』『『森の絵本』(1999・講談社)』『『一日の終わりの詩集』(2000・みすず書房)』『『子どもたちの日本』(2000・講談社)』『『すべてきみに宛てた手紙』(2001・晶文社)』『『読書からはじまる』(2001・日本放送出版協会)』『『本の話をしよう』(2002・晶文社)』『長田弘編訳『詩人が贈る絵本』全14冊(2000~2002・みすず書房)』『長田弘選『大人の本棚 本についての詩集』(2002・みすず書房)』『河谷史夫著『読んだふり――書評百片』(1998・洋泉社)』『谷内修三著『詩を読む詩をつかむ』(1999・思潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長田弘」の意味・わかりやすい解説

長田弘
おさだひろし

[生]1939.11.10. 福島,福島
[没]2015.5.3. 東京,杉並
詩人。1963年早稲田大学第一文学部を卒業。在学中から詩誌の編集に加わり,1965年詩集『われら新鮮な旅人』でデビュー。1970年代初頭,アメリカ合衆国アイオワ大学国際創作プログラムの客員詩人を務めた。1960年の安保闘争(→安保改定問題)を体験した世代の心情をとらえた抒情詩や評論・エッセー(→随筆)から出発し,平易で温かみのあることばで平和や日常の大切さを綴るようになった。1982年エッセー集『私の二十世紀書店』で毎日出版文化賞,1998年詩集『記憶のつくり方』で桑原武夫学芸賞(→桑原武夫),2000年児童文学『森の絵本』で講談社出版文化賞,2009年詩集『幸いなるかな本を読む人』で詩歌文学館賞,2010年詩集『世界はうつくしいと』で三好達治賞(→三好達治)を受賞。東北地方太平洋沖地震や自身の大病を経て書かれた詩集『奇跡―ミラクル―』で 2014年毎日芸術賞を受賞。死の直前に『長田弘全詩集』を出した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「長田弘」の解説

長田弘 おさだ-ひろし

1939-2015 昭和後期-平成時代の詩人,評論家。
昭和14年11月10日生まれ。早大在学中同人誌「鳥」を創刊,「地球」「現代詩」などにくわわる。昭和40年やわらかくなじみやすい表現によって,けんめいに明日への希望をつむぐ詩集「われら新鮮な旅人」,詩論集「抒情の変革」を発表。57年「私の二十世紀書店」で毎日出版文化賞,詩集「心の中にもっている問題」で平成2年富田砕花賞,3年路傍の石文学賞。21年「幸いなるかな本を読む人」で詩歌文学館賞。22年詩集「世界はうつくしいと」で三好達治賞。26年「奇跡―ミラクル―」で毎日芸術賞。ほかに「死者の贈り物」「深呼吸の必要」,評論「探究としての詩」,エッセイ「本を愛しなさい」など。平成27年5月3日死去。75歳。福島県出身。

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知恵蔵mini 「長田弘」の解説

長田弘

日本の詩人。1939年、福島県生まれ。早稲田大学卒業後、65年に詩集『われら新鮮な旅人』でデビュー。物事の本質を柔らかな言葉で紡いだ詩で幅広い層から支持を集め、98年に詩集『記憶のつくり方』で桑原武夫学芸賞、2009年に同『幸いなるかな本を読む人』で詩歌文学館賞、10年に『世界はうつくしいと』で三好達治賞、14年に『奇跡―ミラクル―』で毎日芸術賞をそれぞれ受賞。評論やエッセー、児童文学、翻訳なども数多く手がけ、1982年にエッセー集『私の二十世紀書店』で毎日出版文化賞、2000年に『森の絵本』で講談社出版文化賞を受賞した。15年5月3日、死去。享年75。

(2015-5-12)

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