阿含(読み)あごん

精選版 日本国語大辞典 「阿含」の意味・読み・例文・類語

あごん【阿含】

〘名〙 (āgama の音訳。法帰、法蔵教法、教、伝などと訳す) 仏語
① 釈迦の説いた、いわゆる仏説総称。中阿含、長阿含、増一阿含、雑阿含の四種がある。阿含経
※十善法語(1775)一〇「阿含 三蔵経等に加上して、法相大乗、あるひは空無相の教を説く」 〔翻訳名義集‐四・十二分教〕
小乗経のこと。また、小乗経典の総称。阿含経。
今昔(1120頃か)六「大乗を貴びて小乗を不崇(あがめ)ず、諸(もろもろ)の阿含(あごん)を受持せる者を見ては謗(そしり)て令捨(すてし)む」
※光悦本謡曲・大会(1538頃)「五時といっは、花厳、あごん、方等、般若法華

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デジタル大辞泉 「阿含」の意味・読み・例文・類語

あごん【×含】

《〈梵〉āgamaの音写。来ることの意》
《万法の帰するところの意から》釈迦の説いた教え。経典。
小乗仏教の異称。

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改訂新版 世界大百科事典 「阿含」の意味・わかりやすい解説

阿含 (あごん)

釈尊の説教をまとめた初期仏教聖典サンスクリットの〈アーガマāgama〉を音写した語。アーガマは〈伝承された教え〉を意味する。釈尊すなわちゴータマ・ブッダの入滅後,その教法(ダンマ)や教団の規律(ビナヤ)は,記憶しやすい詩や短文の形で,口伝によって継承された。その後教団の確立にしたがい,教法は《経蔵Sutta-piṭaka》に,規律は《律蔵Vinaya-piṭaka》に,それぞれ集大成された。このうち経蔵は,長,中,相応,増支の阿含あるいはニカーヤnikāya(部)に分けられていて,全体を総称して阿含,阿含経という。スリランカ,ビルマ(現,ミャンマー),タイなどの南方仏教圏で根本聖典として伝承され,上座分別説部という一派が伝えた,パーリ語で書かれた5ニカーヤ(長部,中部,相応部,増支部,小部)が今日まで保存されている。中国にも伝えられて4種の阿含経が漢訳されたが,中国,日本では北伝の大乗仏教が優勢であったため,南伝の阿含経典は小乗として軽視された。ヨーロッパでは19世紀前半からパーリ聖典の研究が進められたが,日本でもその刺激をうけて明治以降,独自の研究がはじまり,すぐれた成果をあげている。阿含の内容にはもちろん後世の付加もあり,すべてが釈尊自身の説とはいえないが,釈尊の教えをなんらかの形で保存する資料は,この阿含と律以外にない。その意味で,釈尊の教えを知るためには阿含は不可欠の文献であり,また原始仏教研究にとっても最重要の資料である。
三蔵
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿含」の意味・わかりやすい解説

阿含
あごん

サンスクリット語 āgamaの音写。「来ること」の意から,釈尊によって説かれ後世に伝承された教えの意となった。釈尊の教えを伝えた聖典をさし,大乗仏教興起以後は,部派仏教のもつ経典をさすようになった。天台宗などで釈尊の説法を時間的に5つに分ける場合 (五時八教 ) ,『華厳経』を説いたのちの 12年間を阿含時といい,この期間にこの経典を説いたとする。

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百科事典マイペディア 「阿含」の意味・わかりやすい解説

阿含【あごん】

パーリ語agamaの音写で,伝承を意味する。仏陀の教説の最も古い形を伝える経典の総称。漢訳では四つの阿含として,パーリ語では5部として伝えられる。阿含の内容をなす個々の経典の成立時期は長期間にわたっている。釈尊の教えを知るうえで不可欠の文献であり,日本では明治期に独自の研究が始まった。

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世界大百科事典(旧版)内の阿含の言及

【初期仏教】より

… 初期仏教の教団は,修行者(出家)と在俗信者(在家)から成り,釈迦は出家に対しては上述の修行をすすめ,在家に対しては施論(慈悲をもって生きとし生けるものを愛し,特に出家者へ布施を行うこと),戒論(在家の五戒すなわち不殺生,不偸盗,不邪淫,不妄語,不飲酒の各戒を守ること),生天論(以上の二つを行えば,死後天に生まれる)の三つをすすめたといわれている。 初期仏教の聖典としては,スリランカに伝わるパーリ語で書かれた5部のニカーヤnikāya,漢訳として伝わる4部の阿含(あごん)(アーガマāgama)その他がある。仏教【加藤 純章】。…

【仏典】より

…国により宗派により多種多様であるが,基本的には経,律,論の〈三蔵〉にまとめられる。〈経蔵〉は釈迦の教説の集成で,〈法〉とも〈阿含(あごん)〉(聖なる伝承)ともいわれる。〈律蔵〉は釈迦によって制定された教団の規則類の集成である。…

※「阿含」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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