中国古代の想像上の動物。その形態は時代によって異なるが,全体のイメージとしては,体が鹿に似て頭に角があるという点でほぼ一貫している。一説に牡(おす)を麒といい,牝(めす)を麟というが,牝には角がない。ゆえに牡のもつ一角は,ヨーロッパのユニコーンにおけるそれと同様,天にむかってそそりたつ陽根のシンボルであったと思われる。しかし,儒家思想の台頭とともに,麒麟は仁徳ある王者や聖人が出現したときだけ人の目に触れるという伝説が形成されるようになった。例えば,孔子71歳のとき,野に無残な麒麟の死体を見て〈我が道窮(きわ)まれり〉とて泣いた(《春秋公羊(くよう)伝》),漢の武帝のとき白麟を得たので元狩と改元した(《漢書》)など。こうして麒麟は仁獣または瑞獣とされ,鳳凰(ほうおう),亀,竜と並んで四霊と呼ばれ,牡牝の交合によっては生まれない,啼(な)き声は音楽の音階に合っている,生きている草や虫を踏まないなどの伝説が生まれた。後世の角端(かくたん)も麒麟の亜種といえよう。
執筆者:中野 美代子
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中国古代の想像上の動物。単に麟ともよぶ。またとくに雄を麒、雌を麟というともいわれ、竜、鳳凰(ほうおう)、亀(かめ)とともに四霊獣の一つとされた。初めは鹿(しか)に似た一角獣であったが、しだいに神秘的な要素を加えて複雑怪奇な姿になった。牛の尾、馬の蹄(ひづめ)、五色で彩られた体をもつ麒麟は、翼を広げてよく飛び、武器であるその角(つの)は先端が肉で覆われているため、相手を傷つけることがないとされた。そのため「麟は仁獣(じんじゅう)なり、王者あれば則(すなわ)ち至る」といわれ、聖天子の治世に限って出現する瑞獣(ずいじゅう)とされた。この麒麟像の形成には、西方世界からの影響があったとされるが、普通キリンとよばれているアフリカ生息のジラフとは、直接の関係はない。
[伊藤清司]
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…神道碑,華表ともいう)を立てたようである。石獣は虎,獅子,麒麟,羊,象などの形をとり,それらは一般に邪悪を避ける想像上の動物として辟邪とよばれている。つまり,悪霊が墓に入るのを防止する役割を担っているのである。…
※「麒麟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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