酸化数Ⅲのリンのオキシ酸で、(HO)2PH(=O)の式で表され、P-H結合とホスホリル基P=Oをもつ無機リン化合物である。亜リン酸とは互変異性体の関係にある( )。
三塩化リンの加水分解により得られる。P-H結合が存在することは、いろいろな物理測定や、一置換塩と二置換塩だけが生成し三置換塩は得られないという事実からわかる(OH基は塩をつくるがPH基は塩をつくらない)。
化学式PH3O3、式量82.0。無色の潮解性結晶で、200℃に熱するとホスフィン(リン化水素)とリン酸を生ずる。重要な誘導体としてアルキルホスホン酸ジアルキルエステルがある。ホスホン酸は還元作用があり、硝酸銀、硫酸銅の水溶液からそれぞれの金属を析出させるので、無電解めっきの還元剤としても用いられる。ホスフィン酸やホスフィンと異なり毒性がある。
ホスホン酸の有機誘導体としてはP原子上のHをアルキル基R(Rはアリール基など、ほかの有機基でもよい)により置換したアルキルホスホン酸と、OH基のHをアルキル基で置換したアルキルエステル(ホスホン酸アルキル)がある。さらにアルキルエステルには、OH基のH原子のうち1個だけをアルキル基で置換したモノエステルと、OH基のH原子2個を両方ともアルキル基で置換したジエステルがある( )。有機ホスホン酸とよばれるのは、P原子上のHをアルキル基で置換した誘導体であり、メチルホスホン酸CH3P(O)(OH)2やフェニルホスホン酸C6H5P(O)(OH)2がその代表である。亜リン酸トリアルキルエステルは、自発的にO原子からP原子にアルキル基が移動する異性化反応をおこして、アルキルホスホン酸ジアルキルエステルを与える。この反応をミカエリス‐アルブーゾフ反応(Michaelis-Arbuzov Reaction)という。この反応により得られるアルキルホスホン酸ジアルキルエステルは重要な合成中間体である。
[廣田 穰 2016年2月17日]
『F・A・コットン、G・ウィルキンソン著、中原勝儼訳『無機化学』(1972・培風館)』▽『古賀元・古賀ノブ子・安藤亘著『有機化学用語事典』(1990・朝倉書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…エステルとして亜リン酸エステルP(OR)3などが知られている。古く亜リン酸と呼ばれていたものは実際にはホスホン酸phosphonic acid H2PHO3であることがわかっている。ホスホン酸は,三塩化リンを加水分解させて得られる。…
※「ホスホン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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