小野道風青柳硯(読み)おののとうふうあおやぎすずり

精選版 日本国語大辞典 「小野道風青柳硯」の意味・読み・例文・類語

おののとうふうあおやぎすずり をののタウフウあをやぎすずり【小野道風青柳硯】

浄瑠璃時代物。五段。竹田出雲二世)・吉田冠子(文三郎)・近松半二・三好松洛らの合作。宝暦四年(一七五四)大坂竹本座初演。小野道風中心に、陰謀家橘逸勢(たちばなのはやなり)、伴健宗(ばんのこわむね)らのことを仕組んだ王代物

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改訂新版 世界大百科事典 「小野道風青柳硯」の意味・わかりやすい解説

小野道風青柳硯 (おののとうふうあおやぎすずり)

(1)人形浄瑠璃。時代物。5段。竹田出雲・吉田冠子・中邑閏助・近松半二・三好松洛の合作。1754年(宝暦4)10月大坂竹本座初演。陽成天皇の時代,天下をねらう橘逸勢(はやなり)一味の悪計が,小野道風・頼風兄弟や小野良実,大工独鈷(とつこ)の駄六(実は文屋秋津)らの活躍と彼らに縁のつながる女たちのけなげな自己犠牲とによって未然に打ち破られるという経緯を描いた作品。道風の事跡を題材に採り上げた芝居としてはすでに加賀掾義太夫,土佐少掾らの浄瑠璃が存在していたが,本作は,それら先行諸作にとらわれることなく,奔放自在に複雑な構想を展開させたもの。なかでも,三蹟の一人として知られた能書家道風を逆に無筆の人物に設定するという奇抜な趣向が,作品全体の眼目となっている。最も著名な個所は,〈東寺〉と〈道風館〉との2場から構成されている二段目で,前者には烏帽子狩衣姿で傘をさした道風が柳に飛びつく蛙のさまを見て,帝位に危険の迫っていることを悟るという古来おなじみの絵柄を生かした見せ場が,また,後者には自害した乳母念力に助けられて無筆だった彼にも文字が書けるようになるという悲壮な劇的場面が構えられるなど,多彩な工夫が凝らされたものとなっているが,今日ではほとんど上演されることがなくなった。

(2)歌舞伎狂言。時代物。(1)の浄瑠璃は,翌55年2月京の沢村国太郎座で歌舞伎に脚色されている。道風を2世榊山小四郎,頼風を初世岩井染五郎,良実を3世坂田藤十郎,駄六を初世桐島儀左衛門,逸勢を初世中村団蔵。ここでももっぱら行われてきたのは二段目で,特に〈東寺〉の場における〈蛙飛び〉を見込んだ道風の見得と長ぜりふ,およびそれに引き続いて演ぜられる公卿姿の道風と下賤な裸姿の駄六との,相撲の型にからめた風変りな立回りなどが,異色の場面として現在に伝えられている。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「小野道風青柳硯」の解説

小野道風青柳硯
おののとうふう あおやぎすずり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
竹田出雲 ほか
補作者
辰岡万作 ほか
初演
宝暦5.2(京・沢村国太郎座)

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