超常現象の一つ。念動,サイコキネシスともいい,PKと略す。超能力によって,物理的手段を用いないで,物理的効果を引き起こす現象。たとえば,心に念じてさいころの目を思いどおりに出すとか,思念を集中してスプーンを曲げたりすること。また,何もないのに突然大きな音を起こしたり,止まっている時計の針を動き出させたりすることもある。このような能力は,児童にわりに多いが,なかには青年時代まで持ち続けている人もある。ユングはこれを,〈超心理的な外在化作用〉とよんだが,J.B.ライン以後,念力とよばれるようになった。現在の超心理学の考え方では,この現象は,熱力学の第2法則(エントロピー増大の法則)を破る事例と考えられている。つまり,エネルギーの流れ方が通常の物理法則に従わず,まれに逆に流れる場合がある,といってもよい。物理学では,時間はエントロピー増大の方向に向かって流れると定義されているが,この点からいえば,時間が未来から過去へ逆流することになる。
執筆者:湯浅 泰雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
じっと心に思い込むことにより得られる力のこと。通常の能力以上、あるいは超常的な効果を生じると考えられている。仏典のなかでは「五力」(信力、精進力、念力、定力(じょうりき)、智力(ちりき))の一つとされ、また「念力岩をも徹(とお)す」というたとえなどで知られる。超心理学において、psychokinesisの訳として「念力」の語を用いている。
[大谷宗司]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…例えば新プラトン主義では,大宇宙(マクロコスモス)と小宇宙(ミクロコスモス)の対応,そのなかでの〈流出emanatio〉を使っての占星術的支配力(逆に小宇宙たる人間の側からみれば,それは〈流入influentia〉すなわち〈影響力〉ということになる)が受け入れられており,それらは〈隠れたoccult〉ものであったからである。しかし,そうした力の存在への信頼は,人間や生物に特有とされる生命力の転化でもある〈念力〉などと並んで,今日でさえ一つの知識領域を構成する。そうしたもののなかから力に関する新しい学問的概念が将来生まれないとはかぎらない。…
…これに対して,新しい立場から研究する方法を考えたのは,アメリカのラインである。ラインはまず,問題の多い心霊現象についてはとりあげず,研究の対象をESPと念力(PK)の二つだけに限定した。ESP研究の手段としては,特殊な図形(星,十字,波,円,正方形)を描いたESPカードを用い,念力の研究にはさいころを用いた。…
…そこでESPカードにより予知の存在を確認するための実験を行ったところ,偶然では考えられないほどの高得点が得られ,ラインは予知の存在を主張した。その後も予知に関するさまざまな実験が行われ,今日に至っているが,統計的に意味のある結果が得られた場合でも,予知に代わる仮説として,念力により,予知仮説を支持する方向へ結果が偏移したとする仮説がたえずつきまとい,予知現象の存在が必ずしも実験的に証明されているとは言いがたい。実験的研究以外にも,予知夢など,偶発的な予知的現象の研究がある。…
※「念力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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