良全(読み)りょうぜん

朝日日本歴史人物事典 「良全」の解説

良全

生年生没年不詳
鎌倉末から南北朝期の画家良詮とも書く。かつては水墨画家可翁仁賀と混同されていたが別人である。作品のほとんどが水墨画法を加味した仏画,道釈画であるため,絵仏師系の画家とみられる。伝歴はほとんど判明しないが,「海西人良全筆」という落款から九州出身説がある。また,作品の伝来,賛者から京都東福寺を中心に活躍したと考えられる。近年,福井本覚寺の「仏涅槃図」が発見され,その落款に「海西人良詮之筆嘉暦第三(1328)二月」とあることから,活躍期を示すひとつの指標が与えられた。現存作として東福寺のために描かれた「十六羅漢図」(建仁寺蔵),水墨による乾峰士曇賛「白衣観音図」(妙興寺蔵),乾峰士曇賛「騎獅文殊図」(正木美術館蔵)などがある。<参考文献>赤沢英二「海西人良詮筆仏涅槃図について」(『国華』1045号)

(山下裕二)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「良全」の意味・わかりやすい解説

良全 (りょうぜん)

14世紀中ごろ,東福寺を中心に活躍した絵仏師系の画家。生没年不詳。良詮とも書き,おもに道釈人物画に優れた力量を発揮した。落款に〈海西人〉〈浮萍散人〉とあることから中国からの渡来画人,また九州の画人という説がある。遺品に,乾峰士曇(けんぽうしどん)著賛の《騎獅文殊図》(正木美術館),同じく《白衣観音図》(妙興寺),《十六羅漢図》(建仁寺)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「良全」の意味・わかりやすい解説

良全
りょうぜん

南北朝時代の画家。良詮とも書く。出身地は九州と推定され,博多出身の禅僧乾峰士曇 (けんぽうしどん。 1285~1356) と関係が深い。制作の中心は仏画だが今日その水墨画的要素が評価される。日本の初期水墨画をになったのは禅僧の余技と,中国から輸入の新しい絵画様式に刺激を受けた専門画家の両翼であるが,良全は後者の代表と考えられる。そのなかでも良全の純然たる水墨画作品『白鷺図』 (浅野家) は,専門画家側の著しい進境を示すものとして重要。この方向は次代の明兆に受継がれた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「良全」の解説

良全 りょうぜん

?-? 鎌倉-南北朝時代の画家。
絵仏師系。乾峰士曇(けんぽう-しどん)にしたがい,京都東福寺を中心に水墨仏画をえがく。「仏涅槃(ねはん)図」の款記に嘉暦(かりゃく)3年(1328)とあり活躍期が判明。作品に士曇の賛がある「白衣観音図」「騎獅(きし)文殊図」など。同一人物とみなされてきた可翁仁賀とは別人。名は良詮ともかく。

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