アインシュタインドハース効果(読み)アインシュタインドハースコウカ(英語表記)Einstein-de Haas effect

デジタル大辞泉 の解説

アインシュタインドハース‐こうか〔‐カウクワ〕【アインシュタインドハース効果】

強磁性体磁化するときに回転を生じる現象。1915年にアインシュタインとド=ハースが発見した磁気回転効果の一つ。磁性体の棒にコイルを巻いてつり下げ、電流を流して磁化させたとき、その棒に電流に比例したトルクがはたらく。
[補説]この効果を発見した実験が、通常、実験を行わない理論物理学者のアインシュタインにとって生涯唯一のものとされる。

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

アインシュタイン=ド・ハース効果 (アインシュタインドハースこうか)
Einstein-de Haas effect

磁性体が磁化したことによりその試料に力学的回転運動が生ずる現象。1915年,A.アインシュタインとド・ハースWander Johannes de Haas(1878-1960)によって発見された。磁性体の棒をつり下げ,これにコイルを巻いて電流を通じて磁化⊿Mを生ぜしめれば,磁気担い手のもつ角運動量には,

 ⊿M=γ⊿Jmag

で与えられる変化⊿Jmagが生ずる(γは磁気角運動量比)。磁性体の全運動量は変わらないから,は試料全体の回転運動の角運動量変化として与えられ,したがって試料には力学的なトルクが働く。これを他のトルクとつり合わせるか,あるいは⊿Mを周期的に変えて共鳴測定するなどの方法によってγの測定ができる。

 アインシュタイン=ド・ハース効果のように磁性体の磁化と回転運動とが関係する現象は,磁気回転効果と呼ばれるが,これにはアインシュタイン=ド・ハース効果と逆に,磁性体に回転を与えたときに磁化が生ずる現象があり,これをバーネット効果Barnet effectと呼ぶ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

アインシュタイン=ド・ハース効果
アインシュタイン=ド・ハースこうか
Einstein-de Haas effect

A.アインシュタインと W.J.ド・ハースが 1915年に発見した現象。強磁性体のある軸方向の磁化を ΔM だけ変化させると,その軸まわりに角運動量が ΔJ 変化する現象。 ΔM=(gμ0e/2m)ΔJ の関係がある。 me電子質量電荷,μ0真空透磁率g (g因子 ) はほぼ2に等しくなる。これは強磁性の原因が電子のスピンであることを示す。

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法則の辞典 の解説

アインシュタイン‐ド=ハース効果【Einstein-de Haas effect】

自由回転が可能な強磁性体の回転軸方向に外部から磁場を与えると,強磁性体が回転を生じる現象をいう.この原因は,電子のスピンによるミクロスケールの磁気モーメントが,電子の力学的な角運動量と密接に結びついていることによる.この実験の結果として,角運動量と磁気を担持しているもの,すなわち電子のスピンとの比が精密に測定可能となった.

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