アオガエル(読み)あおがえる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アオガエル」の意味・わかりやすい解説

アオガエル
あおがえる / 青蛙

両生綱無尾目アオガエル科に属するカエルのうち、体表が一様に緑色をしている種の総称。日本産の種では本州のモリアオガエルRhacophorus arboreus、本州、四国、九州のシュレーゲルアオガエルR. schlegelii琉球(りゅうきゅう)諸島のオキナワアオガエルR. viridis、ヤエヤマアオガエルR. owstoniの4種が含まれ、台湾や中国大陸にも類似の種が分布する。かつては、オキナワアオガエルを単にアオガエルとよんでいたこともある。

 背面の色調には黄緑色から暗紫色まで変化があり、微小な赤斑(せきはん)や黄斑が散在することもある。色調は周囲の色により変色する。腹面は白色か黄色。指端に吸盤が発達する。体長4~8センチメートル。アマガエルと混同されやすいが、体が大きいこと、目の前後に黒斑のないこと、吻端(ふんたん)がややとがっていることなどで区別できる。一般に山間部や山沿いの湿地水田の周辺に生息する。繁殖期になると雄はのどの下方にある鳴嚢(めいのう)を膨らませ、美しい声で鳴く。鳴き声は連続した短いパルスよりなり、1音節の長さは0.5秒程度であるが、ヤエヤマアオガエルでは3~5秒と長くなる。アオガエルの卵は比較的大きく、黒色色素を含まない。産卵時に抱接した雌雄後肢でゼリー状の卵塊をかき回すため、白い泡状となる。水辺の地上や土塊の間に産卵するが、モリアオガエルのように樹上に産卵する種もある。この産卵行動は特異で、繁殖地として岩手県の大揚(おおあげ)沼と福島県の平伏(へぶせ)沼が国の天然記念物に指定されている。孵化(ふか)した幼生は水中で遊泳生活をする。産卵期は春から初夏琉球諸島では冬から春。産卵期以外は樹上や地上で生活する。

倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アオガエル」の意味・わかりやすい解説

アオガエル
tree frog

カエル目アオガエル科 Rhacophoridaeのうち,緑色の体色をもつものの総称。どの種も指先によく発達した吸盤をもち,外形がアマガエルに似ている。おもに樹上生活をする。産卵期は4~7月。卵は黄色で,白い泡状の物質に包まれ,木や草の上,土の中などに産みつけられる。日本内地に最も広くみられるのはシュレーゲルアオガエル Rhacophorus schlegeliiで,体長4~5cm,体の背面に模様がなく一様に黄緑色で,土中の穴に泡状の卵塊を産みつける。より局地的な分布をするモリアオガエルははるかに大型で,産卵も木の葉の上になされる。琉球列島には別種のオキナワアオガエル R. viridisが分布する。

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