モリアオガエル(読み)もりあおがえる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モリアオガエル」の意味・わかりやすい解説

モリアオガエル
もりあおがえる / 森青蛙
[学] Rhacophorus arboreus

両生綱無尾目アオガエル科のカエル。日本の固有種である。本州のほとんどすべての都府県に分布するが、四国、九州に確実な産地は知られていない。低地にもいるが、多くは山間部に生息する。背面はほぼ一様に暗緑色、腹面は灰白色。背面に不規則な小赤褐斑(はん)、腹面に小暗斑を散布することがある。指趾(しし)端は膨大して吸盤となり、樹上生活をする。シュレーゲルアオガエルに似るが、大形であること、背面の緑色が濃いこと、虹彩(こうさい)が赤みを帯びることで区別できる。体長は雌で6~9センチメートル、雄で5~7センチメートル。4~6月に池、沼、水田などの水上に張り出した枝や葉の間に産卵するが、水辺に産卵することもある。1匹の雌に数匹の雄が抱接することが多く、産卵と同時に後肢でゼリーをかき混ぜるため、卵塊は白い泡状となる。卵は黄白色で径約3ミリメートル、卵数300~500個。卵塊の表面はやがて黄褐色となり、硬化する。胚(はい)の発生が進むと内部は液化し、オタマジャクシは下の水面へ落下する。夏の終わりごろに変態し、冬には地中で越冬する。岩手県大揚(おおあげ)沼と福島県平伏(へぶせ)沼のモリアオガエルが国の天然記念物に指定されているほか、県指定の天然記念物も多い。

倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モリアオガエル」の意味・わかりやすい解説

モリアオガエル
Rhacophorus arboreus

カエル目アオガエル科。体長は雄 6cm,雌 8cm内外。背面は緑色あるいは暗緑色で,赤褐色,暗褐色などの斑紋が散在する個体もある。吻端はやや丸い。眼の後方にある鼓膜はほぼ円形で小さく,眼径の約 2分の1である。前後肢とも蹼(みずかき)があり,指先は吸盤になっている。6~7月頃,水辺に出た木の枝や葉,草の上などに白色の泡状卵塊を産みつける。1卵塊中の卵数は 300~500個で,直径約 3mm。本州佐渡島四国地方九州地方に分布する。(→アオガエル

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