アゴヒゲアザラシ(英語表記)Erignathus barbatus; bearded seal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アゴヒゲアザラシ」の意味・わかりやすい解説

アゴヒゲアザラシ
Erignathus barbatus; bearded seal

食肉目鰭脚亜目アザラシ科アゴヒゲアザラシ属。体長は約 2.5mに達し,雌は雄よりわずかに大きい。体重は雄約 262kg,雌約 361kg。出生体長は約 1.3m,出生体重は約 33.6kgである。体毛の色は変異に富み,灰色から茶色までさまざまである。出生仔は濃色で,頭頂から背部にかけて,左右に横断する4本以上の明色帯を有する。頭部が小さいことと前肢が短いことから,体が大きく長く見える。鼻口部は幅広で肉づきがよく,鼻孔も幅広い。名は吻部に密生する感覚毛に由来する。この毛はきわめて長く,硬くて太い。前肢は短いが幅がありがんじょうな爪をもつ。腹部にある4つの乳首を引込めることができる。門歯上顎6本,下顎4本,犬歯は上顎と下顎に各2本,頬歯は上顎と下顎に各 10本である。海氷域の氷上で3月中旬から5月初旬に出産する。繁殖終期には海氷の北上に伴って北側へ回遊し,秋から冬にかけて海氷の南下に伴い繁殖域に戻る。単独で行動するが,まれに氷上で,ほかのアザラシとともに群れをなすことがある。多くの無脊椎動物を捕食し,魚類はあまり食べない。北緯 80゜以南の北極域に周極分布し,亜北極域のベーリング海オホーツク海およびセントローレンス湾に分布し,氷上で生息する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アゴヒゲアザラシ」の意味・わかりやすい解説

アゴヒゲアザラシ
あごひげあざらし / 顎鬚海豹
Bearded seal
[学] Erignathus barbatus

哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目アザラシ科に属する海獣北極圏を囲む寒海に分布し、日本では北海道近海にまれに現れる。体長3メートルに及び、雌はやや小形。吻(ふん)部は幅広く、口辺の太く長い感覚毛がよく目だつのでこの名がある。体色は一様に茶ねずみ色で斑紋(はんもん)はない。前肢の第3指がほかの指よりも長いのが特徴。新生児の毛は灰色を帯び、長くて柔らかく、約2週間で藍灰(らんかい)色に変わる。太平洋亜種は5万~10万頭、大西洋亜種は3万~5万頭生息している。毛皮が利用される。

西脇昌治

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「アゴヒゲアザラシ」の解説

アゴヒゲアザラシ
学名:Erignathus barbatus

種名 / アゴヒゲアザラシ
科名 / アザラシ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / 単独で行動し、とても用心深い性質です。ふつう氷の周辺ですごしますが、海岸に上がったり、川をさか上ることもあります。
体長 / 2.1~2.4m、最大2.5m
体重 / 最大記録はオス260kg、メス360kg
食物 / 底生の小魚
分布 / 北極海とその周辺の海、オホーツク海

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世界大百科事典(旧版)内のアゴヒゲアザラシの言及

【アザラシ(海豹)】より

…南半球では種分化を促す陸地の障壁が北半球ほど複雑でないため種類が少ない。北半球では,北太平洋にクラカケアザラシ(イラスト),アゴヒゲアザラシ,ゴマフアザラシ(イラスト)の3種,北大西洋にハイイロアザラシ(イラスト),ズキンアザラシ,タテゴトアザラシ(イラスト)の3種,両方にワモンアザラシ(イラスト),ゼニガタアザラシ(イラスト)の2種が分布する。北半球の低緯度地方にはモンクアザラシ類3種とキタゾウアザラシが分布し,カスピ海やバイカル湖にもワモンアザラシ類2種が分布する。…

※「アゴヒゲアザラシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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