日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダム鉱」の意味・わかりやすい解説
アダム鉱
あだむこう
adamite
亜鉛(Zn)の含水ヒ酸塩鉱物の一つ。結晶学的には紅柱石と同構造。パラアダム鉱paradamiteとは同質異像関係にある。両者の共存例もある。レグランド鉱legrandite(化学式Zn2[OH|AsO4]・H2O)は別種。亜鉛を置換して銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)などが含まれることがあり、これらはそれぞれ緑、紫、紅色の色調を与える。Cuは銅置換体のオリーブ銅鉱との間で化学組成上連続するものと考えられている。なお通常は黄色、無色のものもある。自形は非常に変化に富み、a軸あるいはb軸に伸びた柱状をなし、これが球状集合あるいは扇状集合をつくる。皮膜状のものもある。
亜鉛およびヒ素(As)を含む鉱物を産する金属鉱床、とくに接触交代鉱床(スカルン型鉱床)あるいは熱水鉱脈鉱床の酸化帯に産する。亜鉛とヒ素のみを主成分とする初生鉱物が知られていないため、構成成分の起源は少なくとも2種類以上の鉱物が考えられる。亜鉛の起源は閃(せん)亜鉛鉱のほか、菱(りょう)亜鉛鉱や異極鉱、ヒ素は硫砒(りゅうひ)鉄鉱のほか、スコロド石のような二次鉱物の可能性もある。これらのなかで亜鉛を主成分とする3種は共存鉱物として普通に産し、また石英、方解石などのほか、二酸化マンガンの鉱物を伴う。日本では宮崎県見立(みたて)鉱山(閉山)、同土呂久(とろく)鉱山(閉山)など接触交代鉱床にみられる。同定は色と集合形態。日本のものは多く黄色系統の色を呈する。命名は原標本を供給したフランスの鉱物学者ジルベール・ジョゼフ・アダムGilbert-Joseph Adam(1795―1881)にちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]