アレルギーを引き起こしやすい体質(アトピー素因ともいう)のある人が、年齢があがるにしたがって、発症する場所とアレルゲンが変化していきながらアレルギー症状が進行する現象を、一つの流れととらえて行進に例え、表現したもの。小児科医の馬場實(みのる)(1929―2012)が提唱した。
典型例を示すと、乳児期に食物アレルギーが皮膚や消化器に症状として現れ、生後6か月以降に喘鳴(ぜんめい)がみられ、1~2歳には気管支喘息となり、その後それが落ち着いたり成人まで持ち越して、その間にアレルギー性鼻炎を発症したり、じんま疹(しん)を経験したりするという流れである。この現象が指摘されたことにより、何らかの介入によりその流れを変化させる方法について、模索がなされている。
提唱された当時と比べ、現在はアレルギー疾患の発症は低年齢化しているが、発症する場所が皮膚から気道に、またアレルゲンが食物から吸入性抗原に移行する様子は変わっていない。アレルギー疾患の発症は、遺伝因子と環境因子の双方が影響する多因子によると説明されている。アレルギー疾患が過去に比べて増加したことは遺伝因子だけでは説明がつかないため、環境因子の影響が大きいととらえ、環境因子を変化させることで発症の予防につなげるという視点が注目されている。
従来の薬物療法は、症状の軽快には効果を発揮するものの、アレルギーの自然経過を将来的に改善する効果については、疑問視されている。一方で発症予防につながりえる候補には以下のようなものがある。第一に、乳児期の皮膚状態を良好に保つことにより、その後のアレルギー疾患の発症が予防できるのではないかというものである。第二に、離乳食の開始時期に、症状がないことを確認しながら多くの食品を少量ずつ積極的に摂取させることがあげられている。第三に、アレルゲン免疫療法(減感作(げんかんさ)療法)により、アレルゲンによって引き起こされるアレルギー症状を起こりにくい状態にすることがあげられる。さらに、腸内細菌叢(そう)との関連について、また妊娠中からの各種の介入についてなどが、研究途上にある。
現時点で明確な証拠がないままに発信される情報には、十分に注意を払う必要がある。しかしこれらの研究成果が応用できれば、アレルギー疾患の機序が明確になり、発症予防が可能になる時期がくるのではないかと、期待がもたれている。
[高増哲也 2022年7月21日]
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