モーリッシュHans Molisch(1856-1937)が1930年代に提唱した用語で,他感作用,遠隔作用などと訳されることもある。特定の種の植物が生産する物質が同種あるいは異種の植物に対して及ぼす作用のことをいう。その作用は,阻害の場合も促進の場合もあるが,結果としては有害なものが多い。セイタカアワダチソウは周辺の植物を駆逐して旺盛な群落をつくるが,これはある種の阻害物質を出して周辺に生えている植物の生育を阻害しているためである。このような作用によって,近傍の他種との競争に打ち勝って繁栄している種があり,植物群落の種組成の決定や遷移の進行については,さまざまな生態的条件の一つとしてアレロパシーが大きな役割を果たしていると推定されているが,まだ研究はよく進んではいない。
作物の忌地とよばれる現象には同種間のアレロパシーが関与しており,ジャガイモ塊茎等の生育を阻害する物質がジャガイモから分泌しているらしい。しかし,忌地の場合の原因物質が何であるかはまだ同定されておらず,その作用機構の究明が待たれている。忌地以外にも栽培植物にはアレロパシーがしばしば認められるようで,これについての研究が進めば,作物の連作障害に対策が立てられ,また田畑の雑草の管理に役立つ知見が得られるものと期待される。
なお,本来の語源からいえば,アレロパシーはある種の植物の生育が他種の作用によって影響を受けることであるが,現在では,忌地のような同種個体間の阻害作用も含めて考えられるようになっている。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
他感作用あるいは遠隔作用ともいう.種々の生物が共存する自然界では,ある生物がほかの生物に対して影響を与えている場合がある.この生物間の影響が,生物により対外に排出される化学物質によって引き起こされる現象をアレロパシー(他感作用)といい,アレロパシーを引き起こす化学物質を他感作用物質という.一般には,植物がほかの植物に作用する現象をいい,クルミの木やマツの木の根本に雑草が生えにくい現象や,アスパラガスの連作障害などによる忌地(いやち)現象もアレロパシーによるものである.クルミの木のジュグロンや,セイタカアワダチソウのポリアセチレン化合物などが他感作用物質として知られている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…第3は,作物が固有の物質を排出し,これが同種または近縁の作物の発芽や生育に阻害的に働くことに基づくものである。アレロパシーと呼ばれるこの現象は,近年研究者の注目を集めるところとなっており,個々の阻害物質の同定や化学構造の決定がなされつつある。 忌地の解決策としては,基本的には同一作物の連作をやめ,各種の作物を組み合わせて順次作付けていく輪作方式の採用が,最も望ましいものとされている。…
※「アレロパシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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