日本大百科全書(ニッポニカ) 「アワルア鉱」の意味・わかりやすい解説
アワルア鉱
あわるあこう
awaruite
金属元素鉱物の一つ。自然ニッケル系の合金鉱物で化学組成上Ni3Fe~Ni2Feの間で変化する。アワルワ鉱ともいう。合金の成分を構成する元素は鉄族のものに限られているとされてきたが、1981年パキスタンのサハコト・キーラSakhakot-Qila塩基性複合岩体から、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)など白金族元素を含むものが発見されている。また少量のコバルト(Co)や銅(Cu)を含むものもある。
超塩基性岩、とくに蛇紋(じゃもん)石化の進んだ橄欖(かんらん)岩中に産し、また隕石(いんせき)中にも産する。日本では高知県南国(なんこく)市岡豊(おこう)の蛇紋岩の砕石場などから顕微鏡的な微細粒が発見されており、その生成には、母岩の蛇紋石化が密接に関係している。
自形はきわめてまれであるが、正八面体のものが報告されている。多く表面の滑らかな塊状をなす。共存鉱物は磁鉄鉱、蛇紋石、緑泥石、苦土橄欖石のほか、クロム鉄鉱、ヒーズルウッド鉱、ペントランド鉱、針ニッケル鉱、自然鉄Fe(実際上は(Fe,Ni))、自然ニッケルなどがある。パキスタン産のものはRu-Os-Ir-Ni-Fe合金鉱物と共存するが、その一部にはこれらの酸化物の存在も指摘されている。本鉱は、ニュージーランド南端のアワルア湾に注ぐ、ジョージ川の流域に分布する超塩基岩体中から最初に記載され、この湾の名が命名に用いられた。
[加藤 昭 2016年2月17日]