日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカリソウ」の意味・わかりやすい解説
イカリソウ
いかりそう / 錨草
[学] Epimedium grandiflorum Morr.
メギ科(APG分類:メギ科)の多年草。根茎は太く短く横にはい、じょうぶな細い根を出す。根出葉は長い柄があり、2~3回3出複葉になり、小葉は卵形で先はとがり、基部は心臓形または矢じり形、縁(へり)に刺毛状の鋸歯(きょし)が多い。葉の毛は両面とも多いものから、ほとんどないものまで、さまざまである。4~5月に開花。30~50センチメートルほどの花茎に根出葉とよく似た葉を1枚つけ、上には総状花序に4~7花をつける。花は下向きに開き、径3センチメートル、白ないし紅紫色。萼片(がくへん)は8枚で外側の4枚は早く落ちる。花弁は4枚で長い距(きょ)がありこれが錨(いかり)に似ているので錨草という。山地の林下に生え、北海道西南部、本州の太平洋側、四国、九州に分布し、薬用、観賞用に栽培する。変種が多く、イカリソウの他に、ヤチマタイカリソウ、ヒゴイカリソウなどがある。類似の種に花が小さく、バイカイカリソウとの中間形態を示すヒメイカリソウが四国、九州に分布する。
[鈴木和雄 2019年9月17日]
薬用
イカリソウの茎葉を漢方では淫羊藿(いんようかく)または仙霊脾(せんれいひ)と称して、強壮、強精、止痛薬として陰萎(いんい)、関節痛、腰痛、四肢麻痺(まひ)、健忘などの治療に用いる。中国四川(しせん)省北部の山中でヒツジがこの草を食べて1日に100回交合したことから淫羊藿の名が生まれたといわれているが、陰萎の治療薬としては良質ではない。なお、中国の薬酒である仙霊脾酒は腰痛、四肢麻痺の治療を目的にしたものである。中国ではホザキノイカリソウE. sagittatum Bak.が用いられる。
[長沢元夫 2019年9月17日]