日本大百科全書(ニッポニカ) 「イボタノキ」の意味・わかりやすい解説
イボタノキ
いぼたのき / 伊保多木
[学] Ligustrum obtusifolium Sieb. et Zucc.
モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の落葉低木。若枝は細く、短毛を密生する。葉は対生し、狭い長楕円(ちょうだえん)形、長さ2~5センチメートルで縁(へり)に鋸歯(きょし)がなく、表面につやがない。5~6月、枝先に小白花を総状に密につける。花冠は筒状漏斗(ろうと)形で先が4裂し、雄しべ2本と雌しべ1本がある。果実は楕円形ないし球形、長さ5~7ミリメートルで10月に紫黒色に熟す。山野に普通に生え、北海道、本州、四国、九州、朝鮮に分布する。葉の裏面に毛を密生するものをビロードイボタという。樹皮に寄生するイボタロウムシ幼虫の雄の分泌物をイボタ蝋(ろう)といい、戸の滑りをよくしたり、家具のつや出しに用い、薬用には皮膚の損傷部の保護に使われる。イボタノキ属はヨーロッパ、アジアの温帯、暖帯からマレーシア、オーストラリアに分布し、世界に約50種あり、日本には9種分布する。
[小林義雄 2021年7月16日]