改訂新版 世界大百科事典 「イワヒゲ」の意味・わかりやすい解説
イワヒゲ (岩髭)
Cassiope lycopodioides(Pall.)D.Don
高山の岩場の割れ目に生えるツツジ科の小低木。葉は鱗片状で茎に密着し,全形はひも状で,高山のきびしい環境に適応した形をもつ。この形から,和名はついた。茎は匍匐(ほふく)し,多くの枝に分かれて,岩に密着している。葉はごく小さく,ひし形で厚く,上半部の縁は膜質で白く,長さ1~1.5mm。夏,枝先の葉のわきから細長い花柄を伸ばし下垂する1花をつける。花冠は白色,鐘形で先は5裂し,中に10本のおしべがある。葯の背面に2本のとげ状突起があり,虫の体に触れて花粉が散るのを助ける。果実は球形で上向きにつき,各室の背面が裂ける。本州中部以北,北海道,千島,カムチャツカ,アラスカに分布する。この仲間は世界に10種ほどあるが,すべて寒地植物か高山植物であり,花がかわいいため,ヨーロッパやアメリカでロックガーデンに植栽される。
執筆者:山崎 敬
イワヒゲ
Myelophycus simplex(Harv.)Papenfuss
潮間帯の岩上にひげをたてたような形状で群生する褐藻イワヒゲ科の1種。太さ1mmくらいの先のとがった体が多数,束になって生育し,全形はマツの葉を思わせる。高さ5~15cmになり,分枝はしない。多年生の海藻で,春から初夏に遊泳性の生殖細胞を放出すると体は細く短くなり,その状態で越夏し,秋に再び生長を開始する。潮間帯中部に生育するので,干潮時には体は空中に露出してひからびたように乾く。しかし満潮で海水中に浸ると弾力性のある体に戻る。同じ褐藻のイシゲやイロロとともに日本の太平洋岸の潮間帯中部に群落をつくる代表的な海藻である。本州太平洋沿岸,四国,九州,朝鮮半島沿岸に広く分布する。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報