イントネーション(その他表記)intonation

翻訳|intonation

デジタル大辞泉 「イントネーション」の意味・読み・例文・類語

イントネーション(intonation)

言葉を話すとき、息の切れ目ごとに現れる上がり下がりの調子疑問断言などを表現する際の論理的音調と、発話者の感情起伏などを表す感情的音調とがある。語調
[類語]アクセントプロミネンス

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精選版 日本国語大辞典 「イントネーション」の意味・読み・例文・類語

イントネーション

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] intonation ) 話をするとき、それが意味する内容や話し手の意図、感情によって、ことばのまとまり全体に現われる、上がり下がりの調子。たとえば日本語のふつうの疑問文に用いられる文末を上げる調子。アクセントとは別。抑揚
    1. [初出の実例]「隠しきれない感情の昂揚が語調(アクセント)や音調(イントネーション)の上に滲み出る」(出典:若い人(1933‐37)〈石坂洋次郎〉上)

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改訂新版 世界大百科事典 「イントネーション」の意味・わかりやすい解説

イントネーション
intonation

文全体あるいはその一部分にかかわる音声的特徴で,その言語社会において習慣的に定まっている状態のものをいう。日本語では抑揚ともいう。主として高さの変動がその実質をなしている。文のイントネーションが同一言語内に複数種類ある場合,それらがなんらかの意味的差異に関与しているといってよい。文というものの長さがさまざまなので,異なるイントネーションは文の中間部よりも末尾における音程動態で互いに区別されることが多い。東京方言の簡単な文を例にとると,〈来る〉は,単語としては〈ク〉が高く〈ル〉が低いという高低アクセントで発音されるものであるが,文の場合には,〈ル〉が下がりっぱなしで発音されると,通常,誰かが来るということを表すが,〈ル〉が低いところから軽く上昇すると,疑問を表す文になる。すなわち,イントネーションの違いが文の意味の違いに結びついているわけである(東京方言では,実際にはイントネーションの種類はもう少し多く,微妙かつ複雑である)。イントネーションは,それをどの程度に利用するか,何種類有するかといった点で,言語や方言によって非常に変異する。叙述文と肯否を問う疑問文が単語や接尾辞などによらずにもっぱらイントネーションの違いで区別される言語もある。なお,いくつかの言語間には共通性が認められるが,文末が上昇すると疑問を表すということが普遍的であるとする考え方は,事実に反する。また,高低アクセントを用いる言語で,かつ,文末に各イントネーションの特徴が現れる言語(日本語もその一例である)では,イントネーションが特に文末の語の高低アクセントとからんで現れることが多い。東京方言の〈来る?〉と〈行く?〉では,〈ル〉と〈ク〉が上昇する点では共通であるが,高低アクセント上〈ル〉と〈ク〉の高さが異なるため,それぞれの上昇の出発点の高さがひどく異なっている(この場合,〈ル〉のほうが低い)。スワヒリ語アフリカ)では,たとえばanasoma〈(彼は)読んでいる〉は,単語としてsoが高いというアクセントを有し,叙述文(平叙文)ではそのとおりに発音される。しかし,疑問文では,soをより高くし,末尾の低いmaとの差を誇張するようなイントネーションをとる。したがって,イントネーションを解明するには,その言語のアクセントを解明することが先決である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イントネーション」の意味・わかりやすい解説

イントネーション
いんとねーしょん
intonation

一般には、話しことばにおける声の抑揚をいう。音楽では無伴奏で歌われる単声聖歌の始めの部分。また、正確な音の高さをもいう。

 言語学では、話しことば、朗読などにおける声の高さの時間的変化をいう。句や文の終結と連続とを区別し、平叙文、断定文、命令文、疑問文の別を示し、また、喜怒哀楽など話者の感情を表出する。とくに統語構造、話の焦点などを明示するため、内容理解への影響が大きい。

 一般に、文の末尾は低く、次の句へ連続する場合の句末はやや高い。疑問文では文末が上昇する。上昇の度合いには、言語差および方言差があり、英語より日本語のほうが上昇幅が少なく、東京方言より近畿方言のほうがより少ない傾向がある。疑問文における末尾の上昇は各言語に共通する特徴と考えられているが、言語により異なる場合も少なくない。英語では、疑問詞が先行する文の末尾は上昇せず、Yes, Noで答えられる疑問文は末尾が上昇する。この種の言語は多いが、ロシア語では、「マーマ・ドーマ?」Мама дома?(お母さんはお家?)の場合、доで急に上昇し、末尾で急に下降する。

 いわゆる強弱アクセントの言語では、アクセントは強さ、イントネーションは高さの変化であるとされる。最近の実験結果によれば、アクセントのもっとも重要な成分は高さであり、強さ、長さおよび音質の変化がこれに伴う。イントネーションも高さの変化が主体であるが、これとともに、強さ、長さおよび音質の変化が伴う場合がある。たとえば、平叙文と疑問文とは末尾の基本周波数の変化(高さの変化)であり、喜び、怒り、悲しみなどの感情表現は、高さの変化だけではなく、音質と長さおよび強さの変化を伴う。

 感情表現における音響的特徴においても、人間としての普遍性があるとともに、言語による差異があり、英語より日本語のほうが変化が少ない。イントネーションに関しても、アクセントと同様に、生成(発話)と知覚(聞こえ)の両面から検討すべき点が多い。

[杉藤美代子]

『吉沢典男著「イントネーション」(『国立国語研究所報告18 話しことばの文型(1) 対話資料による研究』所収・1960・国立国語研究所)』『安倍勇著『日英イントネーション法』(1973・学書房)』『杉藤美代子著「アクセントとイントネーション」(国広哲弥編『日英比較講座1 音声と形態』所収・1980・大修館書店)・『日本人の声』(1994・和泉書院)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イントネーション」の意味・わかりやすい解説

イントネーション
intonation

広義では,音声連続においてみられる音の高さの変動の総称で,「音調」ともいわれる。音節音調,単語音調,句音調などもあるが,狭義では,文にあたる単位に現れる音調,すなわち「文音調」をさすのが普通である。アクセントが単語 (結合) について一定しており,単語の意味との関係が恣意的なのに対し,文音調は肯定,質問などの意味をもち,同一の単語のうえにいろいろの文音調が加わりうる点が異なる。東京方言では「切る」は/○˥○/,「着る」は/○「○/というアクセントをもつが,おのおのに対し,肯定/↘/,質問/↗/,問い返し/\↗/などの文音調が加わることができ,しかも,それぞれの場合において,アクセントの相対的区別は常に保たれる。また,文音調は,質問音調のほうが肯定音調よりも上昇の程度が大きいのが普通であるというように,心理的要因に支配される面が多いが,また社会慣習的決りでもあるから,言語 (方言) による差もある。

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百科事典マイペディア 「イントネーション」の意味・わかりやすい解説

イントネーション

音声言語において,呼吸の段落ごとに現れる声の高さの変動。アクセントの位置が個々の語について決まっているのに対し,または文の一部に相当する呼吸の段落全体に関するものをいう。感情的なニュアンスを添えたり,叙述,疑問,断言などを表現する。

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