改訂新版 世界大百科事典 「ウキゴリ」の意味・わかりやすい解説
ウキゴリ
floating goby
Chaenogobius annularis
スズキ目ハゼ科ウキゴリ属の魚。体はやや緑色がかった淡黄色で腹部は白く,体側の中央部に不規則な灰褐色の斑紋が並んでおり,背中には雲形の斑紋が散在する。近縁のエドハゼと異なり,背中にうろこがある。第1背びれの後方と胸びれの基部には黒色の斑紋が認められる。5月上旬から7月上旬にかけて産卵し,卵は付着卵で3mm×1mmの長円形であり,1000個から2000個ほど産卵する。水生植物の茎の表面や石の底面などに産みつけられ雄が保護する。幼稚魚は群生しているが成魚は比較的単独で行動する。ふつう泥底の流れのよどんでいるところを好み,ときどき中層にとどまりじっとしていることもある。冬季には深所の枯葉などの堆積しているようなところに潜んで越冬する。汽水域,河川,湖沼などあらゆる水域に見られるが,あまり上流域には生息しない。北海道以南に分布し,日本のハゼ類のうちではもっとも北方まで分布する。つくだ煮などの食用になるがあまり重要でない。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報