うたいもの

精選版 日本国語大辞典 「うたいもの」の意味・読み・例文・類語

うたい‐ものうたひ‥

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代検地に際し、土地実況を見やすくし、また、将来いざこざを防ぐため、一筆限りに、目標となる接続の道、堀、川その他を副書すること。脇書
    1. [初出の実例]「うたひものは実況に依り成るべく簡明を要す」(出典:徳川幕府県治要略(1915)〈安藤博〉丈量に関する例規)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「うたいもの」の意味・わかりやすい解説

うたいもの

「うたもの」ともいう。日本音楽の様式分類用語。 (1) 雅楽では器楽に対し,催馬楽 (さいばら) ,朗詠あるいは東遊 (あずまあそび) など声楽曲の総称として用いられ,「歌物」「謡物」「唱物」などと書かれる。 (2) 平曲,説経,浄瑠璃などの「語り物」に対し,地歌長唄など歌曲的性格の強い種目をさしていう。特徴として,歌詞の伝達より旋律美に比重があり,1字あたりの音価が比較的大きい。すなわちメリスマ的要素が強く,節回しがなだらかである。しかし,浄瑠璃にも歌曲的性格が強い歌浄瑠璃と呼ばれる多くの種目がある。一方「うたいもの」のなかにも,長唄では唄浄瑠璃という様式があるほか,大薩摩や謡曲など語り物的な曲節が摂取されており,地歌でも浄瑠璃物作物などがある。箏曲の場合も,浄瑠璃や謡曲の影響を受けて成立した山田流箏曲などは語り物的性格が強い。このように,ある種目の基調が歌曲的であっても,一概に「うたいもの」に分類することはできない。なお,地歌,箏曲においては,手事物に対して特に歌本位の曲をさして「歌物」「唄物」 (うたもの) といい,また謡曲に取材した曲を地歌では「謡物」 (うたいもの) と呼んで区別する。 (→歌謡 )  

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