改訂新版 世界大百科事典 「ウバユリ」の意味・わかりやすい解説
ウバユリ
Cardiocrinum cordatum(Thunb.)Makino
山地の林床に生育し,7~8月,大型の白花をつけるユリ科の多年草。西南日本にはウバユリvar.cordatumが,東北日本にはオオウバユリvar.glehnii(Fr.Schm.)Haraが分布する。ウバユリ属は数種からなる東アジア,ヒマラヤの特産属で,ユリ属に近縁である。茎は高さ50~100cm,頑丈で中空。葉は茎の中部に集まってつき,ユリ属とちがって葉柄と葉身の分化が明りょうである。葉身は卵状心形で長さ15~25cm,単子葉植物としては比較的珍しい網状脈をもつ。和名は花時にはいたみがひどく葉(歯)がないので姥(うば)にたとえたという。花は長さ12~17cmで,横向きに咲き花弁内側に褐色の斑点がある。葯はユリ属とちがってT字形にぶらさがらず,花糸の先にしっかりとつく。若葉や鱗茎は食用にされ,鱗茎からは良質のデンプンがとれる。日本産のウバユリは観賞されるほどの美花ではないが,ヒマラヤ産のC.giganteumは大輪で美しく,ヨーロッパでは栽培され中国では薬用に供される。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報