うま味調味料(読み)うまみちょうみりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うま味調味料」の意味・わかりやすい解説

うま味調味料
うまみちょうみりょう

うま味をもつ成分、あるいはこれに近いものを、単独、あるいは2~3種混合したもので、料理にうま味をつけるための調味料。代表的な成分にグルタミン酸ナトリウムイノシン酸ナトリウムグアニル酸ナトリウム、5'-リボヌクレオチドナトリウムなどがある。1970年代までは「化学調味料」とよばれた。加工食品や市販総菜の調味に用いた場合の原材料表示名は、「調味料(アミノ酸)」または「調味料(アミノ酸等)」である。

 昆布の主要うま味成分のグルタミン酸は、1908年(明治41)に理学者の池田菊苗(きくなえ)が工業的に製造することに成功した。最初は小麦タンパク質を酸分解して得ていたが、のちに脱脂大豆の酸分解により、さらに発酵法や化学合成法などによってもつくられるようになった。現在のグルタミン酸ナトリウムのほとんどは、発酵法によりデンプンを主材として微生物からつくられている。また、イノシン酸は、カツオだしの中からリービヒにより1847年に発見され、シイタケに含まれるグアニル酸は核酸分解物から1898年イギリスのバングにより得られた。これらは、酵母核酸を取り出し、それを酵素処理するか、デンプンを材料に、微生物を使用して発酵するかの方法によりつくられている。

河野友美・山口米子]

種類

うま味調味料として市販されているものには、(1)グルタミン酸ナトリウム、(2)グルタミン酸ナトリウムとイノシン酸ナトリウム、あるいはグルタミン酸ナトリウムとイノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、5'-リボヌクレオチドナトリウムなどの混合物、すなわち複合調味料、(3)食塩にグルタミン酸ナトリウムをコーティングした味つけ食塩、(4)うま味調味料と天然のだしを配合した風味調味料(だしの素(もと))などがある。複合調味料は、グルタミン酸ナトリウムとほかの核酸系のうま味調味料を配合することで飛躍的にうま味が強くなることを利用したものである。

[河野友美・山口米子]

調理

うま味調味料は、だしのうま味成分のうち主要なものの純粋品に近いものと考えてよい。しかし、だしの味に近いだけで、だしと同じ味ではない。したがって料理のうま味としては、うま味調味料だけに頼るのではなく、あくまでも不足ぎみのうま味をうま味調味料により補うような使い方をするのがよい。たとえば、昆布だしに対してはイノシン酸ナトリウムを含むようなうま味調味料を、かつお節のだしの味が不足ぎみのときはグルタミン酸ナトリウムを足すと味が強くなる。うま味調味料は煮る、蒸す程度の加熱では安定している。しかし、油などにより180℃近くに加熱されると、グルタミン酸ナトリウムは一部変化し、ピロリドン酸となる。これはうま味がなく、かすかな苦味がある。したがって、炒(いた)め物をするときなどうま味調味料をいきなり油に入れたり、早くから加えたりすると、味のきき方が悪くなることがある。うま味調味料は種類により味にかなりのくせがある。グルタミン酸ナトリウムは多く使用してもくどくないが、イノシン酸ナトリウムやグアニル酸ナトリウムを含むものでは、多く使いすぎると嫌な味が強くなり、かえって料理をまずくする。また、うま味調味料は多く使用すると、香辛料などのききが悪くなるし、食塩の鹹味(かんみ)が薄く感じるようになるため、食塩濃度を高くしないとよい味にならず、薄味の料理に仕上げにくい。また複合調味料は、甘味のあるものに多く使用すると、くどい味になるから使用量に注意が必要である。

[河野友美・山口米子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「うま味調味料」の解説

うま味調味料

 フレーバーエンハンサーともいう.以前は,化学調味料といった.グルタミン酸一ナトリウム,イノシン酸ナトリウムなどの調味料.コンブのうま味を追跡してその本体がグルタミン酸一ナトリウムであることが発見され,タンパク質の加水分解や発酵法で作られたグルタミン酸一ナトリウムが使われている.その後イノシン酸やグアニル酸がやはりうま味をもつことが発見され,範囲が広がった.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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