バニリン(その他表記)vanillin

翻訳|vanillin

デジタル大辞泉 「バニリン」の意味・読み・例文・類語

バニリン(〈ドイツ〉Vanillin)

バニラの果実中に含まれる、芳香をもつ無色針状結晶。工業的にはリグニンを分解して作る。菓子などの香料用。ワニリン

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精選版 日本国語大辞典 「バニリン」の意味・読み・例文・類語

バニリン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] vanillin ) 甘い香気のある白色ないし黄白色の針状結晶。分子式 C8H8O3 バニラ豆のもつ香気成分の一つで、香料、特に食品香料として用いる。
    1. [初出の実例]「香料バニラの匂(にほひ)のするバニリン」(出典:児童物理化学物語(1928)〈高橋・厚木・友田〉応用化学)

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改訂新版 世界大百科事典 「バニリン」の意味・わかりやすい解説

バニリン
vanillin


つる性の熱帯植物バニラの蒴果(さくか)が発酵すると得られる芳香物質。これは発酵により組織内の配糖体が酵素で分解されて生じたものであり,特有の甘い香気をもつためバニラフレーバーとしての用途がきわめて広く,とくにバター,チョコレート,アイスクリームをはじめ各種の食品香料として大量に使用されている。バルサム安息香丁子油などの精油にも少量含まれる。バニリンは芳香族アルデヒド(4-オキシ-3-メトキシベンズアルデヒド)で,比重1.06(液体),沸点284℃,融点83~84℃の白色ないし淡黄色の針状結晶。アルコール,油に可溶,水,グリセリンにはわずかに溶ける。1890年,オイゲノールの分解による合成法が提示され,以来いくつかの合成法が行われているが,エチルアルコール抽出で得た天然物も良質のものとして用いられている。

 合成法には次のようなものがある。

(1)リグニンからの製法 パルプ工業の廃液中に含まれるリグニンスルホン酸を,アルカリと酸化銅,あるいはニトロベンゼンで酸化して,リグニンバニリンを得る。古くは配糖体コニフェリン希硫酸で加水分解してコニフェリルアルコールを得,これを酸化してバニリンとした。

(2)グアヤコールからの製法 グアヤコールとクロロホルムまたはクロラールを,アルカリ存在下で縮合させ(ライマー=ティーマン反応),それを酸化して合成する。

(3)そのほか,オイゲノールまたはサフロールを原料とする方法もある。

バニリン分子内の-OCH3基の代りに-OC2H5基が入ったものが合成され,バニリンと同様の芳香をもち,かつその強さも強いことが見いだされた。これをエチルバニリン,またはブルボナールbourbonalという。バニリンに比べ着色しないので,着色をきらう製品に,バニリンと同様の用途,甘い花様,果実様などの調合香料として広く用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バニリン」の意味・わかりやすい解説

バニリン
ばにりん
vanillin

芳香族アルデヒドの一つで、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの別名。メキシコ原産のラン科植物バニラ豆(バニラビーンズ)、安息香、ちょうじ油(丁字油)などに含まれて天然に存在する。メキシコの先住民はバニラ豆の香気を知っていて、これをたばこに詰めたり飲み物として用いたりしていたが、バニラ豆をヨーロッパにもたらしたのはコロンブスである。1857年にゴブリーNicolas-Theodore Gobley(1811―1876)はバニラ豆からこの化合物の結晶を取り出し、1858年にバニリンと命名。バニラ豆に含まれているコニフェリンが発酵により分解してバニリンになり、豆の表面に結晶として析出する。コニフェリンはモミなどの針葉樹にも含まれているので、バニリンの原料として用いられた。現在では、アメリカおよびカナダ産の安価なリグニンを利用して、リグニンスルホン酸を酸化する方法により生産されるバニリンが世界市場の大半を占める。チョコレートに似た甘い芳香をもつ白色結晶。水には溶けにくいが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。食品香料としての用途は広く、アイスクリーム(バニラ)などの乳製品、ココアなどに用いられるほか、たばこのフレーバーや香水としても用いられている。

[廣田 穰 2015年3月19日]


バニリン(データノート)
ばにりんでーたのーと

バニリン

 分子式 C8H8O3
 分子量 152.1
 融点  83~84℃
 沸点  284℃
 溶解度 1g/100mL水(15℃)
     1500g/dm3(60%エタノール)

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化学辞典 第2版 「バニリン」の解説

バニリン
バニリン
vanillin

4-hydroxy-3-methoxybenzaldehyde.C8H8O3(152.15).バニラ豆(ラン科)から抽出されたのでこの名称がある.そのほか,安息香,ペルーバルサムちょうじ油などのなかにも存在する.工業的には,亜硫酸パルプ廃液中のリグニンスルホン酸を酸化する方法が用いられている.ほかの合成法としては,オイゲノールサフロールから得られるプロトカテクアルデヒドをメチル化する方法がある.バニリンはバニラ特有の甘いかおりをもつ白色の結晶.融点81~82 ℃,沸点285 ℃,170 ℃(2.0 kPa).水への溶解度1 g L-1(15 ℃).エタノールに易溶,水に難溶.香料として広い用途をもち,とくにアイスクリーム,チョコレート,キャンデー,あるいはエッセンス,タバコなど,さまざまな食品やし好品にフレーバーとして添加される.LD50 2000 mg/kg(ラット,経口).[CAS 121-33-5]

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百科事典マイペディア 「バニリン」の意味・わかりやすい解説

バニリン

バニラ,安息香,ペルーバルサムなどに含まれる芳香族アルデヒドC8H8O3。工業的にはグアヤコール,オイゲノール,サフロール,リグニンなどから合成する。特有の甘い芳香のある微黄白色針状結晶。融点83〜84℃。食品香料としてアイスクリーム,チョコレート,ケーキをはじめリキュール,タバコなどに添加され,また保留剤,調和剤,変調剤として用いられる。バニリン分子内の−OCH3基の代りに−OC2H5基が入ったものが合成され,これをエチルバニリン,またはブルボナールという。バニリンに比べ着色しないので,着色をきらう製品に広く用いられている。(図)
→関連項目香料丁子油バニラ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バニリン」の意味・わかりやすい解説

バニリン
vanillin

化学式 C8H8O3 。ワニリンともいう。バニラ果のアルコール抽出物から得られたのでこの名がある。芳香をもつ白色針状晶。融点 81~82℃。バニラ果,安息香,ちょうじ油などに含まれているが,大量に用いられるので工業的に合成される。オイゲノールを異性化後に酸化する方法,サフロールを出発原料とする合成法などが実施され,また針葉樹パルプ廃液中のリグニンから製造する方法も行われている。

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栄養・生化学辞典 「バニリン」の解説

バニリン

 C8H8O3 (mw152.15).

 バニラマメに含まれる芳香性のある化合物.

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世界大百科事典(旧版)内のバニリンの言及

【バニリン】より

つる性の熱帯植物バニラの蒴果(さくか)が発酵すると得られる芳香物質。これは発酵により組織内の配糖体が酵素で分解されて生じたものであり,特有の甘い香気をもつためバニラフレーバーとしての用途がきわめて広く,とくにバター,チョコレート,アイスクリームをはじめ各種の食品香料として大量に使用されている。…

【ラン(蘭)】より

…開花期間も長いし,着生ランでは乾燥にも強く,栽培がそれほどむずかしくなく,苗の長距離輸送もやさしいことが,園芸植物としてのランの利用を発展させたのであろう。観賞以外の利用としては食品香料となるバニラや,生薬のサレップなどがある。【井上 健】
【洋ランと東洋ラン】
 日本の園芸界では,ラン科植物を東洋ラン,洋ラン,和ランなどに分けて取り扱っているが,これは植物学上での分類ではない。…

※「バニリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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