(読み)すい

精選版 日本国語大辞典「粋」の解説

すい【粋】

〘名〙
① まじりけのないこと。また、そのもの。純粋。
※訳文筌蹄初編(1714‐15)二「粋、純字と同意にて重しもののきっすいなる意あり、純情の義を兼ぬ」 〔荀子‐非相〕
② 多数、多様の中で特にすぐれているもの。えりすぐったもの。
※本朝文粋‐堀杏菴序(1629)「抜其粋、分其類、裒集数百篇、名曰本朝文粋
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉一〇「生中(なまなか)陶画の粋(スヰ)と呼ばれし、先師の画工場の一と称(たた)へられて」
③ (形動) 世態や人情の表裏によく通じ、ものわかりのよいこと。特に、遊里の事情によく通じていて、言動や姿があかぬけていること。また、そのさま。いき。通。
※評判記・寝物語(1656)一八「水(スイ)成男はくぜつせず」
※歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)二「粋程結句愚痴とやら」
[語誌](③について) (1)語源は諸説あるが、風流の意を表わす「すき(好)」の音便形か。色の道に無常を観じてもののあわれを知るという、「徒然草」以来の考え方から生まれた美意識で、近世になって島原などの遊郭から広まった。
(2)大尽遊びの中で、意気・張りの気概とともに、おおような訳知りが高く評価され、西鶴の作品では専ら「帥」の字が当てられている。また、西鶴以後の浮世草子では、「すい」は「精」に通じると考え、よく弁(わきま)えて深入りしない意で「睟」の字がもてはやされた。
(3)近世後期に入ると、文化の中心は上方から江戸に移り、江戸では「つう(通)」が流行する。それとともに「すい」はやがて「つう」に取って代わられ、「すい」は、専ら上方語として、遊興の場で幕末まで生き続ける。しかし、文化文政期、「いき」と区別できない「すい」も見られるようになり、「すい」と読むのが一般的だった「粋」の字も、「いき」と読むようになった。

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デジタル大辞泉「粋」の解説

すい【粋〔粹〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]スイ(呉)(漢) [訓]いき
まじりけがない。「生粋(きっすい)純粋
質が良くすぐれている。すぐれたもの。エッセンス。「国粋精粋抜粋
いき。「粋人無粋
[名のり]きよ・ただ

すい【粋】

[名・形動]
まじりけのないこと。また、そのもの。純粋。
すぐれているもの。えりぬき。「日本文化の」「科学技術のを集める」
世情や人情に通じ、ものわかりがよく、さばけていること。特に、遊里の事情などによく通じていて、言動や姿のあかぬけていること。また、そのさま。いき。「をきかす」⇔無粋(ぶすい)
「―な捌(さば)きに口数きかせず」〈露伴・椀久物語〉

いき【粋】

[名・形動]《「意気」から転じた語》
気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること。また、そのさま。「な姿」「な柄」「な店」⇔野暮(やぼ)
人情の機微、特に男女関係についてよく理解していること。また、そのさま。「な計らい」⇔野暮
花柳界の事情に通じていること。また、花柳界。「筋」⇔野暮

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「粋」の解説


すい

江戸時代における美意識の一つ。ものによくじていること,あるいは通じている人をいい,転じて色の道によく通じていること,あるいはよく通じている巧者をいう。『色道大鏡』によれば「抜粋」を上略したもの。江戸時代前期に町人勢力が強まった結果,彼らが力のはけ口として求めた遊興,ことに色の道において最も理想的なものと考えた美意識。当初は主として上方の上層町人の求めたものであり,延宝~元禄 (1673~1704) 頃に定着し,『好色一代男』などの文学でも追求された。大町人の勢力後退に伴い,意識が薄れ,明和 (64~72) 頃から遊興の中心が江戸に移って,粋に近いものとして「 (つう) 」が現れた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「粋」の解説


すい

近世前期、上方(かみがた)の遊里に発生し、幕末に及んだ、近世町人の美的遊興理念を示す語。特殊社会としての遊里の特殊な事実のすべてについて知っている「穴知り」の要素と、遊興にあたってとらわれない融通無碍(むげ)な態度で行動する状態をいう「わけ知り」の両者を総合して備えている態度である。江戸後期の「通(つう)」と重なり合うが、通が観念的、規範的であるのに対し、粋は上昇期上方町人の間から発生したものだけに、創造的、行動的である点に特徴がある。粋のほかに、帥(すい)、ときとして推、睟、水などの字もあてられる。

[神保五彌]

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旺文社日本史事典 三訂版「粋」の解説


いき

江戸町人文化の現象や情緒面において,その特色ないし傾向を表す言葉
「意気」とも書く。「野暮 (やぼ) 」に対する概念で,内容はさまざまであるが,すっきりした気分や意地を示す心意気などがほぼ共通している。たとえば男女間の問題もただ道学者的に排撃するのではなく,人情機微 (きび) を察した処置は「いき」なはからいであり,冬でも素足で通すのが「いき」な風俗であった。

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世界大百科事典 第2版「粋」の解説

すい【粋】

江戸時代,元禄期(1688‐1704)ころを盛りにもっぱら上方で用いられた,一種の美的生活理念を表す言葉。仮名草子では〈水〉の字を多く当てる。従来,〈(つう)〉や〈いき〉とは似て非なる別個の美意識として説かれることが多かったが,時代的に区分された意識としては,〈粋〉→〈通〉→〈いき〉のように,まったく同一線上に並ぶ意識として考えることもできる。また三者がほとんど区別されることなく重ねて用いられた例もあるところから,これらは互いに通い合う性質・内容を色濃くもつと考えるべきであろう。

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世界大百科事典内のの言及

【いき】より

…“(すい)”や“”と同じく,江戸時代における一種の美的生活理念。ただし“粋”“通”が地域的・時代的限定を伴うのに対して,“いき”は江戸時代を通じて用いられ,現代にも通用している。…

【遊郭(遊廓)】より

…たとえ求道精神が旺盛だとしても,売春に色道(好色道)を見いだしたのは決して個人の趣味に基づく発想でないだけに特異である。これと並行して作り出された〈(すい)〉の美学は,やがて中期には〈いき〉や〈(つう)〉の美意識となって生活全般に及ぶことになる。〈いき〉や〈通〉は必ずしも遊郭が全面的に育成したとはいえないが,根幹部分で関与していたことは疑いない。…

※「粋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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