オアカムロ(読み)おあかむろ(その他表記)roughear scad

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オアカムロ」の意味・わかりやすい解説

オアカムロ
おあかむろ / 尾赤鰘
roughear scad
[学] Decapterus tabl

硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。山形県から九州西岸にかけての日本海沿岸、北海道から九州南岸にかけての太平洋沿岸、奄美(あまみ)大島、沖縄本島、東シナ海、台湾、オーストラリア、マダガスカル島、ハワイ諸島など太平洋とインド洋、およびスリナム、カリブ海など大西洋の沿岸域に広く分布する。アジ亜科のうち第2背びれと臀(しり)びれの後ろに1本の小離鰭(しょうりき)があること、側線の湾曲部に稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗(うろこ)。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)を欠くことなどの特徴をもつムロアジ属に属する。体は側扁(そくへん)せずに丸みを帯びて長く、体高は体長の16.6~23.0%。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下方に達しない。上下両顎の歯は微細で1列に並ぶ。後部の鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は小さいが明瞭(めいりょう)。脂瞼(しけん)(目の周囲や表面を覆っている透明の膜)はよく発達する。体長20センチメートル以上の個体では、鰓蓋膜(さいがいまく)の上部と下部が細かい鋸歯(きょし)状である。胸びれの後端は第2背びれの起部に達しない。鰓弓(さいきゅう)の下枝に28~33本の鰓耙(さいは)がある。側線の湾曲部に61~72枚の円鱗がある。体は背部が青緑色で、腹部は銀白色。各ひれは淡赤色から暗青黄色で、とくに尾びれの赤色が目だつことが、本種の和名の由来である。水深360メートル以浅の大陸棚縁辺域に生息し、おもにイカ類、浮遊性甲殻類、小形魚類などを捕食する。沖縄海域での産卵期は夏ごろで、産卵場は宮古島周辺海域であると推測されている。最大体長は約60センチメートルになる。巻網底延縄(そこはえなわ)、底引網、棒受(ぼううけ)網、定置網などで漁獲される。旬は秋から冬で、肉質は柔らかいので刺身には向かないが、鮮魚として利用される。

 胸びれと尾びれが赤いことでアカアジに似るが、本種はアカアジよりも体高が低いこと、側線の湾曲部の鱗が多いことなどで容易に識別できる。

[鈴木 清・尼岡邦夫 2023年11月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「オアカムロ」の意味・わかりやすい解説

オアカムロ
Decapterus russellii

尾だけでなく,すべてのひれが生時には赤い,スズキ目アジ科ムロアジ属の海産魚。サバのような形と大きさをしており,全長40cmに達する。本州中部以南の浅所から深所まで分布。釣られたり,定置網にも入る。オアカ(東京,和歌山),アカムロ(和歌山,高知),アカアジ(鹿児島)などとも呼ばれる。また小さいものを和歌山でアカメンタイという。ムロアジ類は干物にすることが多いが,この種は鮮魚で食用とし,干物にはしない。夏に美味。
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