オナモミ(読み)おなもみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オナモミ」の意味・わかりやすい解説

オナモミ
おなもみ
[学] Xanthium strumarium L.

キク科(APG分類:キク科)の一年草。高さ約1メートル。葉は互生し、3.5~10センチメートルの柄がある。葉身は基部が心臓形の卵状三角形で、浅く3~5裂する。質はやや厚く、両面に剛毛があってざらつく。頭花は単性で、雄頭花は葉腋(ようえき)から出る短い円錐(えんすい)花序につき、雌頭花は雄花序の下の葉腋につく。雄頭花の総包片は1列で、多数の小花を取り巻く。小花には筒状の花冠がある。雌頭花の総包片は2列。内片は合生して、卵円体となり、表面にかぎ状の刺(とげ)を密生する。小花には花冠がない。果実を蒼耳子(そうじし)といい、中国では蓄膿症(ちくのうしょう)の治療に欠かせない重要な薬物とされている。神経痛、マラリアの治療にも用いられる。果実を包む総包葉片に太い腺毛(せんもう)が密生し、これで他物に粘着する。荒れ地道端に生え、北半球に広く分布。若いときの外観はメナモミに似るが、メナモミは両性花で果実には刺がない。名はメナモミより強壮であることによる。

[小山博滋 2022年2月18日]

 日本には古い時代に帰化したと考えられている。全国的に数が減り、東京や関西では絶滅した。かわりに外来種オオオナモミやイガオナモミが増えたが、オオオナモミも減少しつつある。

[編集部 2022年2月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オナモミ」の意味・わかりやすい解説

オナモミ
Xanthium strumarium; burweed

キク科の一年草。低地路傍や荒れ地に普通にみられる植物。ユーラシア大陸に広く分布し,北アメリカにも帰化している。茎は高さ 1m内外。葉は長い柄をもち三角形状で,縁に不規則なあらい鋸歯がある。夏から秋にかけて,雌雄別々の黄緑色の頭状花をつける。雄の頭状花は枝先につき,球形で多数の小花から成り,雌の頭状花は葉腋につき,内側の総包片が合着して壺状になり,外側にはかぎのついたとげが密生していて,内部に2個の雌花がある。熟すると2個の痩果となり,壺状の総包に入ったまま他物について広がる。

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