オフュルス(読み)おふゅるす(その他表記)Max Ophüls

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オフュルス」の意味・わかりやすい解説

オフュルス
おふゅるす
Max Ophüls
(1902―1957)

ドイツ出身でフランスを中心に、ドイツ、アメリカで活躍した国際派の映画監督。女性を主人公にした映画に定評がある。ドイツ占領下のザールブリュッケンに生まれ、ウィーンを中心に舞台演出家として活躍した後、1931年に監督デビュー。ナチス台頭を避けて1933年にフランスに渡り、1936年に国籍を取得。1941年に渡米し、ハリウッドで『風雲児』(1947)、『忘れじの面影』(1948)などを撮る。1950年にフランスに戻り、ダニエル・ダリューを主人公に『輪舞』(1950)、『快楽』(1952)、『たそがれ女心』(1953)の3本の傑作を撮った後、大作歴史は女で作られる』(1955)を手がけるが、興行的には失敗に終わり、短縮版が公開された。この完全版がよみがえるのは2008年のことである。クレーンを多用した移動撮影は、スタンリー・キューブリックやジャック・ドゥミなどに大きな影響を与えた。映画監督のマルセル・オフュルスMarcel Ophüls(1927― )は彼の息子。

[古賀 太]

資料 監督作品一覧(日本公開作)

ヨシワラ Yoshiwara(1937)
風雲児 The Exile(1947)
忘れじの面影 Letter from an Unknown Woman(1948)
無謀な瞬間 The Reckless Moment(1949)
魅せられて Caught(1949)
輪舞 La ronde(1950)
快楽 Le plaisir(1952)
たそがれの女心 Madame de...(1953)
歴史は女で作られる Lola Montès(1955)

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改訂新版 世界大百科事典 「オフュルス」の意味・わかりやすい解説

オフュルス
Max Ophüls
生没年:1902-57

ドイツ生れのフランスの映画監督。流麗な移動撮影で知られ,また,つねにヒロインの視点に立つ〈女性映画〉の巨匠ともみなされ,J.ルノアールに次いでヌーベル・バーグの作家たちに大きな影響を与えた(例えばジャック・ドゥミー監督の長編第1作《ローラ》(1960)はオフュルスにささげられている)。ウィーンのブルク劇場などでおもにA.シュニッツラー戯曲を演出して名声を高め,映画にも進出するが,1933年,ナチスが政権につく直前にフランスへ亡命。以後,イタリア,スイスと転々とし,41年にハリウッドへ。ダグラスフェアバンクス・ジュニア主演の活劇《風雲児》(1947),シュテファン・ツバイクの短編小説を映画化した《忘れじの面影》(1948)などを撮るが,映画史におけるオフュルスの名声を決定的にしたのは,第2次大戦後(1950)フランスに戻って撮った4本の作品,《輪舞》(1950),《快楽》(1952),《たそがれの女心》(1953),《歴史は女で作られる》(1955)である。
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百科事典マイペディア 「オフュルス」の意味・わかりやすい解説

オフュルス

映画監督。ドイツ生れ。ウィーンでシュニッツラーの戯曲を演出して名声を得るが,ナチスの台頭にともない,1933年フランスに亡命。その後イタリア,スイスをへてハリウッドで映画を監督した。第2次大戦後フランスで発表した《輪舞》(1950年)で成功を収める。代表作にモーパッサンの短編小説を映画化したオムニバス作品《快楽》(1952年)や《たそがれの女心》(1953年),《歴史は女で作られる》(1955年)などがある。流麗な移動撮影を得意とし,また女性を描く監督として高く評価された。ヌーベル・バーグの監督に影響を与えたことでも知られる。

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