改訂新版 世界大百科事典 の解説
オルバースのパラドックス
Olbers' paradox
オルバースH.W.M.Olbersが1823年に提起した宇宙の有限か無限かに関する設問。実はハリーE.Halleyがすでに1世紀前に提起したとの説もある。すなわち,宇宙が無限に大きく,しかも天体の数の密度が時間的空間的に一定ならば,空の明るさは昼夜の別なく無限大となるはずである。なぜなら,距離rにある天体の数はr2に比例し,光はr⁻2に比例して暗くなるので,その積はrによらない。したがってr=0からrまで積分した光量はrに比例し,r→∞で光量は∞となる。〈現実に夜空が暗いのは,途中で光の吸収がないとすれば,宇宙が有限の証拠だと考えてよいのか?〉という設問である。これに対する現代の解答は,宇宙はたとえ無限に大きくても,膨張のために光が到達しうる範囲は有限であり,そのために受ける光量は有限にとどまる。つまり,夜空が暗いという事実は,光の星間吸収または有限宇宙の証拠にはならないのである。
執筆者:大沢 清輝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報