山師(読み)ヤマシ

デジタル大辞泉 「山師」の意味・読み・例文・類語

やま‐し【山師】

鉱脈発見鑑定鉱石の採掘事業を行う人。
山林の買付けや伐採を請け負う人。
投機的な事業で大もうけをねらう人。投機師
詐欺師。いかさま師。
[類語]詐欺師ペテン師いかさま師食わせ者当たり屋凶漢凶賊奸賊海賊山賊賊徒賊子逆賊謀反人悪人悪者悪漢悪党悪玉悪女毒婦あくわる凶徒凶手人非人人でなし奸物曲者暴漢暴れ者暴れん坊暴徒荒くれ者ごろつきならず者地回りやくざ暴力団無頼漢無法者与太者ごろちんぴらあぶれ者

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精選版 日本国語大辞典 「山師」の意味・読み・例文・類語

やま‐し【山師・山仕】

  1. 〘 名詞 〙
  2. やまぶし(山伏)
    1. [初出の実例]「斗藪の行者筑後房と云山師を招請してこれを護身加持せしむ」(出典:清水霊験記(1323))
  3. 山林の買付や伐出しを請負う人。また、材木の素性や蓄積量を見定める人。
    1. [初出の実例]「右之くじ、山師・山先十二三人集、きかせ候て」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)四月八日)
  4. 鉱山の採掘事業を行なう者。また、鉱脈の発見・鑑定などをする人。鉱山業者。山や田地の売買を職業とする人にもいう。金山師(かなやまし)山主山元
    1. [初出の実例]「御出入りの山師申上る様は、長崎海道に広根の松と申すが御座ります」(出典:咄本・楽牽頭(1772)山師)
  5. ( 鉱山の採掘事業がきわめて射倖的、場あたり的であるところから転じて ) 投機的な事業をして金もうけをたくらむ人。山をはる人。やまこかし。
    1. [初出の実例]「利を先へ積は山仕の口車」(出典:雑俳・表若葉(1732))
  6. 他人を欺いて利益を得ようと図る人。詐欺師。ペテン師。やまこかし。
    1. [初出の実例]「小紋立付大紋裘 疑是山師(ヤマシ)金蔓求」(出典:浮世草子・風俗遊仙窟(1744)一)
  7. やし(野師)
    1. [初出の実例]「猪の逸太様の御長屋山師聞き」(出典:雑俳・柳多留‐二五(1794))

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改訂新版 世界大百科事典 「山師」の意味・わかりやすい解説

山師 (やまし)

15世紀末から16世紀にかけて生まれた鉱山業者。金山師の略称。山主,山元ともいった。鉱業の練達者で,おもに採鉱経営の請負主にあたる。金子(かなこ),大工,手子,桶(おけ)大工,樋引(といびき),山留,鍛冶などの多くの採鉱労働者を支配し,坑内と選鉱場・精錬場や資材・食糧・製品の仕入れ・運搬の事務をとる勘定場など,鉱山のいっさいを管掌していた。その報酬は直山,請山など鉱山の領有形態によって差があった。その家業は多く世襲されていた。18世紀からは山師は普請の請負師のことともなり,さらに19世紀からは投機的な事業をするもののことから詐欺師のことをいうようにもなった。近代からの株式取引においてこうしたことばが一般に使用された。一方,山林の立木を売買し伐採,運材などの林業労働を支配する材木商人のこともいうようになった。山仕出しであり,多く村内に居住しており,外部の材木商人に対して有利な地位にあった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山師」の意味・わかりやすい解説

山師
やまし

本項では鉱山経営者としての山師について述べる。山師は、鉱山の経営いっさいを支配統轄した。山師の下には、金子(かなこ)(坑内の掘り場の責任者)、大工(採鉱係)、手子(てこ)(運搬夫、掘り子ともいい、女、子供があたった)、樋大工(排水樋の製作にあたる)、樋引き(排水係)、山留め(支柱係)などがいて鉱山の生産に携わった。

 鉱山業は近世になってから大いに発展し、測量・採鉱・選鉱・精錬などの鉱山技術者、熟練労働者の専業化が進んだが、そのなかから指導力、経営力のある者が、山師となって他を率いるようになったのである。徳川家康は、江戸幕府の財政を確立するために鉱山を重視し、「山例(さんれい)五十三箇条」を定めて山師に特権を与えた。そのため鉱山の構内は一種の治外法権が認められ、殺人者が鉱山に逃げ込んでも役人に渡さなくてもよいことになっていた。19世紀初期の鉱山経営技術者である佐藤信淵(のぶひろ)は『坑道法律』のなかで、「……山内のことは山主の心次第なるものなれば、山主たる者は智慮(ちりょ)深く、外貌(がいぼう)は甚だ愚にして、行状は放蕩(ほうとう)に見えて、内心甚だ倹素に厚く施すことを好みて諸勘定極めて高く、勇豪にして甚だ涙軟(もろ)く……」と山師の心得を述べている。

[黒岩俊郎]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「山師」の解説

山師
やまし

山仕・山主・山元とも。鉱山の経営者。探鉱・測量・採掘・排水などの技術・労働者を抱え,領主に対して採掘を請け負う。16世紀の石見銀山の銀山衆が起源。はじめて鉱山を見立てた山師を山先(やまさき)という。江戸初期の金銀山の大繁栄期には多数の山師が集まって次々と間歩(まぶ)を開坑し,運上山では入札によって稼行者が決定された。佐渡の味方但馬は受領(ずりょう)名をもち各地の鉱山の経営にたずさわった有力者だが,当時珍しい例ではない。小規模な金銀山や17世紀中期以降の銅山では,個人ときには共同で一山の経営全体を長期にわたって請け負い,採鉱・製錬・資材調達など全体を管理した。別子(べっし)銅山の泉屋住友家はその代表例。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山師」の意味・わかりやすい解説

山師
やまし

山仕とも書き,山主,山元ともいう。 16世紀から現れ,江戸時代に広く存在した鉱山業者。金子,大工,手工,樋大工,鍛冶などの鉱山労働者を率いて主として採鉱部門にあたったが,選鉱,製錬を兼営する者もある。中期以降は,請山として鉱山の全経営を請負う者が多い。転じて投機家,詐欺師をもいう。

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世界大百科事典(旧版)内の山師の言及

【イシャウッド】より

…39年アメリカに移住し東洋哲学に興味を持つとともに,第2次大戦後は南米旅行記《コンドルと牝牛》(1949),小説《夕暮れの世界》(1954)などを発表している。しかし彼の最もすぐれた仕事は,カメラアイという映画的手法でヒトラー政権直前のベルリンを描いた《山師》(1935),六つの短編小説の連作から成る《ベルリンよさらば》(1939)で,特に映画《嵐の中の青春》をはじめ,何度か映画化・劇化されている。【鈴木 建三】。…

※「山師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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