動物界に広く分布する塩基性物質で,正式名称はγ-トリメチルアンモニウム-β-ヒドロキシ酪酸,構造は(CH3)3-N⁺-CH2-CH(OH)-CH2-COOH。ビタミンBrとも呼ばれ水溶性の成長因子。筋肉や肝臓から抽出精製される。広範な分布からその生理的重要性が注目されてきたが,鳥類,哺乳類ではγ-アミノ酪酸から生合成されるためにその意義がなかなか理解されなかった。フレンケルG.Fraenkelらによってコメゴミムシダマシの必須成長因子として同定されて(1947)以来その生体内での機能がわかってきた。肝臓などから単離したミトコンドリアは触媒量のカルニチンを加えないと脂肪酸が酸化されない。すなわち,カルニチンは脂肪酸がミトコンドリア膜内へ入る反応を仲介する分子として働いている。細胞質中の遊離脂肪酸はATPにより活性化され脂肪酸CoAになり,次にミトコンドリア内膜に存在するカルニチン-アシルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素によってその脂肪酸部分はカルニチンへと転移され,アシルカルニチンを生じる。アシルカルニチンはミトコンドリア内膜を透過することができ,内部で再び脂肪鎖をCoAに渡し脂肪酸CoAとなりβ-酸化をうける。この結果カルニチンは脂肪酸の酸化を促進することとなる。
執筆者:大隅 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(R)-3-hydroxy-4-trimethylammoniobutanoate.C7H15NO3(161.20).ビタミン BT ともいう.β-ヒドロキシ-γ-ベタインの一つ.ほとんどすべての生物,各組織に存在するが,動物では副睾丸に高濃度に存在する.エピクロロヒドリンにシアン化カリウム,トリエチルアミンを順次反応させカルニチンニトリルとし,加水分解後光学分割する.吸湿性が大きい.分解点196~198 ℃.-31.3°(水).ミトコンドリア内膜でアシル基転移の担体として機能し,生成した長鎖脂肪酸のアシルCoAのマトリックス内におけるβ-酸化を可能にする.塩酸塩は消化機能低下の治療薬に使われる.LD50 6690 mg/kg(雄マウス,経口).[CAS 541-15-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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