キセニア(読み)きせにあ(英語表記)xenia

翻訳|xenia

デジタル大辞泉 「キセニア」の意味・読み・例文・類語

キセニア(xenia)

被子植物が受粉した際に、花粉顕性遺伝子が、その胚乳はいにゅう形質を支配する現象重複受精によるもので、胚乳以外に影響の現れる場合をメタキセニアとよぶ。

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精選版 日本国語大辞典 「キセニア」の意味・読み・例文・類語

キセニア

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] xenia ) 重複受精結果植物の雌の形質である胚乳(はいにゅう)に雄の形質が現われる現象。トウモロコシの黄色胚乳系(優性)の花粉を白色胚乳系(劣性)の雌しべに与えると種子に黄色の胚乳が生ずるなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キセニア」の意味・わかりやすい解説

キセニア
きせにあ
xenia

被子植物の種子の胚乳(はいにゅう)の性質に、雄性(花粉)の影響が現れる現象。以前は、メンデルの「遺伝法則」と異なる現象と考えられたが、被子植物特有の重複受精の機構が明らかとなって、この現象の仕組みも解決された。

 トウモロコシのある品種は黄色の胚乳で、他の品種の胚乳は白色をしている。この場合、黄色胚乳種は、白色胚乳種より顕性であり、黄色胚乳種の花粉を白色胚乳種の雌しべに受粉させると、できた種子の胚乳が黄色となる。これは重複受精によって、胚乳組織も胚と同様に受精によって生ずるためである。黄色胚乳系統のトウモロコシの花粉の二つの精核のうち、一つの核は卵核と合体して胚をつくるが、もう一つの核は2極核と合体して胚乳となるので、花粉の顕性の形質が胚乳に現れるのである。胚乳以外の母系統の組織に、雄性の性質が出る場合はメタキセニアという。メタキセニアの例として、ナツメヤシ果実の大きさや熟化の時期が花粉の種類によって左右されることが知られている。

吉田精一

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改訂新版 世界大百科事典 「キセニア」の意味・わかりやすい解説

キセニア
xenia

もともとは1881年フォックW.O.Fockeが提唱した言葉で,花粉(雄親)の影響で種子や果実など植物体の一部の形質に変化が現れる現象をいったが,現在ではこのうち内胚乳に影響が現れる場合のみをいう。被子植物は重複受精をおこない,花粉からきた2個の雄核のうち,1個は卵核と受精して胚を形成し,他の1個は二つの極核と受精して内胚乳を形成する。この結果,内胚乳には雄親の核が入るので胚乳に雄親の性質が直ちに現れることがある。これがキセニアであるが,内胚乳の表現型に関して,雌親が劣性,雄親が優性の場合にのみ生ずる現象である。一例をあげると,もち性のイネを雌親としてうるち性のイネの花粉を交雑すると,もち性のイネにうるち性の穎果(えいか)をつける。これは内胚乳の貯蔵デンプンの化学的組成をきめるうるち性遺伝子Wx)がもち性のそれ(wx)に対して優性であるため,2個の極核(おのおのの遺伝子型wx)と1個の雄核(遺伝子型Wx)の受精によって生じた内胚乳(遺伝子型Wxwxwx)に直ちに優性形質のうるち性が発現するためである。なお胚乳以外の組織に雄親の影響が現れる場合はメタキセニアと呼んで区別される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キセニア」の意味・わかりやすい解説

キセニア
xenia

植物の果実や種子の形質に父系 (花粉) の遺伝子の影響が現れる現象。これは重複受精によって,花粉に由来する雄核が胚乳核に入ることにより起る現象である。トウモロコシの胚乳の色が花粉の系統によって左右される例などが有名。これと似た現象が胚乳以外に現れるときは,メタキセニアともいう。

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