生態学用語の一つ。存在する個体数は少なくとも、その種がいなくなると、生態系が大きく変化してしまうような、生態系の安定性や多様性を保つうえで不可欠な種をさす。中枢種ともいう。キーストーン(要石(かなめいし))とは、石や煉瓦(れんが)を積み上げてつくられたアーチの最頂部に挟み込まれ、全体を固定させる楔形(くさびがた)の石である。
キーストーン種という考え方は、1969年にアメリカの動物学者ペインRobert Treat Paine(1933― )によって発表された。ペインは北太平洋の潮間帯の食物連鎖において、その頂点に位置するヒトデを取り除いた実験によってキーストーン種の存在を証明した。ヒトデを取り除いたことで、捕食されていたイガイが大量に増殖したことをきっかけに、潮間帯の生態系そのものが崩れた。以降、1998年に証明された北太平洋沿岸でコンブ目の海藻ケルプの生息地に住むラッコをはじめ、多くのキーストーン種が発見されている。
生物の生態系は、現在も十分に理解されたとはいえない状況にあり、近年は、自然保護の観点からもキーストーン種の存在が重要視されている。生物多様性の保全を効率的に行うために、その種が生態系に与える影響を理解して保護や管理を行うことが不可欠になっている。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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