クサトベラ(その他表記)Scaevola frutesches Krause

改訂新版 世界大百科事典 「クサトベラ」の意味・わかりやすい解説

クサトベラ
Scaevola frutesches Krause

東南アジアからオーストラリア,南太平洋諸島熱帯海岸に普通なクサトベラ科の常緑で草本的な低木。高さ1~3mで,太くてやや多肉な枝はよく分枝しながらすらりと伸びる。葉は互生,狭倒卵形で,先端は円い。花は,熱帯では通年,日本では夏季に見られ,葉腋ようえき)から出る花序に数花がつく。実は液果,楕円形で長さ約8mm。日本では屋久島以南の暖地海岸に生育する。葉が食用にされるが苦みがあり重要でない。幹基部の材はよく木化しており,塩水に耐え,ボートの部品に使われるという。葉や樹皮はマレーシア地域で民間薬に利用される。

 クサトベラ属は南半球のオーストラリア地域で分化している樹木や草本約100種を含み,いくつかの種が観賞用に温室で栽植されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサトベラ」の意味・わかりやすい解説

クサトベラ
くさとべら / 草海桐花
[学] Scaevola taccada (Gaertn.) Roxb.
Scaevola sericea Vahl.

クサトベラ科(APG分類:クサトベラ科)の低木。茎は太く高さ1、2メートル。葉は枝先に集まり互生し、狭倒卵形、肉質である。6~8月、葉腋(ようえき)に集散花序を出し、長さ2センチメートルほどの唇形花をつける。花は白色でのちに黄色に変わる。小笠原(おがさわら)、九州(屋久島(やくしま)、種子島(たねがしま))、沖縄の海岸に生え、中国南部、東南アジアから太平洋諸島に広く分布する。名は、葉のようすがトベラを思わせ、茎は柔らかく草質なのでいう。

 クサトベラ科Goodeniaceaeは、子房下位で1、2室、各室に1~4個の胚珠(はいしゅ)がある。世界に約14属320種あり、そのうち日本には1属1種が分布する。

[高橋秀男 2021年11月17日]

 クサトベラ科はAPG分類でもクサトベラ科とされる。この分類によると世界に約12属440種、日本には1種が分布する。

[編集部 2021年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クサトベラ」の意味・わかりやすい解説

クサトベラ
Scaevola sericea

南アジアや太平洋諸島の熱帯,亜熱帯に広く分布する常緑小低木で,海岸にしばしば大きな群落をつくる。分類上はクサトベラ科として独立科に扱われる。高さ数十 cmから2~3m。枝は淡灰褐色で平滑,ぽきぽきと折れやすい。葉は枝先に集ってつき,長さ 10~20cmの倒卵状楕円形,明るい緑色で光沢があり質は軟らかい。春から夏に,枝の上部葉腋に小さな白花をつける。花冠の下半部は花筒をつくり,上半部は5弁に裂けるが扇状に平開し,左右対称花となる。果実は径 1cmの球形で白色に熟す。

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