改訂新版 世界大百科事典 「クビワミフウズラ」の意味・わかりやすい解説
クビワミフウズラ (首輪三斑鶉)
plains wanderer
Pedionomus torquatus
ツル目クビワミフウズラ科の鳥。この科はオーストラリアの東南部に分布する1種だけからなる。全長15~17cm,雌は雄より少し大きい。ミフウズラによく似た鳥で,雌のほうが雄より目だつ羽色をしていて,繁殖期の雌雄の役割はミフウズラ科の鳥と同様に逆転している。雄は頭上から背,尾が灰色で,細かい白と黒の縞模様があり,のどから胸腹部は白く,黒褐色斑が散在している。雌は上胸から後頸(こうけい)部を通る首輪のような白と黒の帯があり,下胸部と側頭部は褐色。ミフウズラ科とは,多くの解剖学的特徴のほかに,後指のあることで区別される。かつてはオーストラリアに広く分布していたらしいが,現在ではオーストラリアの東南部の平地の草地に少数が生存しているにすぎない。生態一般は詳しく研究されていないが,地上のくぼみに草を集めて簡単な巣をつくり,1腹4個の卵を産む。その卵はミフウズラ科の卵よりも,むしろシギ・チドリ類の卵に似ているといわれる。一妻多夫制で,抱卵はおもに雄があたり,雛の世話も雄が行う。雛は綿毛をもって生まれ,孵化(ふか)後まもなく巣を離れる。食物は小型の昆虫と種子である。地上で生活し,飛翔(ひしよう)力が弱く,しかも人をまったく避けぬ性質があるため,狩猟と生息環境の破壊によって,その生息数が激減したと考えられている。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報