クラプロート(読み)くらぷろーと(英語表記)Martin Heinrich Klaproth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラプロート」の意味・わかりやすい解説

クラプロート
くらぷろーと
Martin Heinrich Klaproth
(1743―1817)

ドイツの分析化学者。プロイセン王国ウェルニゲローデ(現在はドイツ)に仕立職人の子として生まれた。薬剤師の訓練を受けてドイツ各地を遍歴したのち、1771年ベルリンに落ち着いて薬局を経営した。1782年以来医学校や兵学校の化学講師を務め、1810年ベルリン大学の開設とともにその化学教授となった。鉱物分析法の改良に貢献し、たとえば沈殿秤量(ひょうりょう)する前に加熱乾燥すること、装置や試薬からの不純物の混入を防ぐこと、分析誤差が未知元素の存在を示唆することなどに注意を喚起した。その分析技術を適用して、1789年にウランジルコニウムの二つの新元素を発見(ただし酸化物として)、1803年には希土類のセリア酸化セリウム)を発見。また、以前に発見されていながら埋もれていたチタンテルルなどを再発見した。また古代遺跡の発掘品にも分析化学を適用した。1793年、ラボアジエの新しい化学理論を精密な追試によって確認し、これをドイツに普及することにも貢献した。

[内田正夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラプロート」の意味・わかりやすい解説

クラプロート
Klaproth, Heinrich Julius

[生]1783.10.11. ベルリン
[没]1835.8.28. パリ
ドイツの東洋学者。化学者 M. H.クラプロートの子。独学で中国語を学んだのち,ドレスデン大学を卒業,1804年ペテルブルグの科学アカデミー助教授となり,在任中ロシア遣清使節団の通訳をつとめた。また日本人漂流民大黒屋光太夫一行の一人新蔵から日本語を学んで日本語彙集を著わした。 09年パリに移り,16年パリ大学教授となった。『アジアの諸言語-付言語地図』 Asia polyglotta nebst Sprachatlas (1823) でアジアの諸言語を紹介,のちの研究の機運を開いた。特にカフカス諸語についての研究は重要で,のちに死語になり,この著述のみによって知られる言語もある。 32年林子平の『三国通覧図説』のフランス語訳を刊行,また 34年,I.ティチングのフランス語訳『日本王代一覧』に序文を書くなど,ヨーロッパの日本研究に寄与した。

クラプロート
Klaproth, Martin Heinrich

[生]1743.12.1. ウェルニゲローデ
[没]1817.1.1. ベルリン
ドイツの化学者,薬学者。ベルリン大学創設とともにその初代の化学教授 (1810) 。ウランの発見 (1789) をはじめ,ジルコニウム (89) ,セリウム (1803) を発見,元素と同定し,チタンテルルの発見を検証した。また分析化学の基礎の確立に貢献した。フランスの A.ラボアジエの反フロギストン説をいちはやく支持し,当時のドイツ学界をフロギストン説から新燃焼理論へ転向させる功績があった。 E.ウォルフとともに化学事典5巻を編んだ (07~10) 。 200編以上もの論文を発表しており,それらは『鉱物の化学的知識に関する論文集』 Beiträge zur chemischen Kenntnisse der Mineralkörperに収められている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android