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林子平(しへい)が1785年(天明5)江戸で五色刷で刊行した地誌。5枚1冊。それまで万国か本邦の地図はあるが隣国の地図がなく、国防・行政に必要として著した。日本を中心とする総図、朝鮮八道、琉球(りゅうきゅう)三省、三六島、蝦夷(えぞ)国(北海道)全図、小笠原(おがさわら)諸島の図よりなる。自序と桂川甫周(かつらがわほしゅう)の序がある。「題初」に「国事ニ与(あずか)ル者地理ヲ不知(しらざる)トキハ治乱ニ臨(のぞみ)テ失有(うしなうあり)、兵士ヲ提(さげ)テ征伐ヲ事トスル者地理ヲ不知トキハ安危ノ場ニ失有……」とある。91年『海国兵談』が禁にあったとき、本書もともに絶版となる。外圧を予感した先見的な書として意義が大きい。のちパリで翻訳出版され、アメリカとの小笠原諸島帰属問題が争われたときの有力資料となった。『林子平全集』(第一書房)所収。
[塚谷晃弘]
地理書。林子平(しへい)著。1785年(天明5)成立。翌年桂川甫周の序をつけて刊行。朝鮮・琉球・蝦夷地の3国および無人島(小笠原諸島)の地図,さらに日本とそれらの地域との里程を示す図の計5図を載せ,各地域の地理や風俗について軍事的観点から説明を加えた。朝鮮の部ではハングルを紹介しているのが注目されるが,詳細に論じられているのは蝦夷地で,ロシアの蝦夷地侵略の危険性を指摘し,蝦夷人への教化を進め,蝦夷地の開発によりロシアの侵略に対抗しうると主張。92年(寛政4)子平が幕政批判を理由に処罰されたとき,絶版となる。ヨーロッパにも伝えられ,1832年にパリで出版された。「林子平全集」所収。
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