幼児期から思春期までの子供によってかかれた絵をいう。幼児期の子供の絵をとくに幼児画というのに対して、小学生以上の子供の絵を児童画という場合もある。児童画の研究はクックやイタリアの美術史家リッチC. Ricciらによって19世紀末から始められ、日本では大正期に霜田静志(せいし)(1890―1973)らによって手がけられるようになった。子供の絵の「発見」が児童中心主義的児童観の高潮する時代になされたのも偶然ではない。児童画は子供の独特な感情や世界観を写し出している鏡であり、したがって大人の絵に適用される審美尺度を子供の絵に当てはめるのは不当なのである。
[大林正昭]
児童画の発達段階は大きく三つの時期に分けられる。第一の段階は「掻画(そうが)期」とよばれ、1歳過ぎから3、4歳ころまで続く。この時期の絵は運動的興味に基づくものであることが多く、具象的な形態をなさないなぐりがきである。しかし、一見無意味な絵の色彩、線の形状や配置、スペースなどはしばしば子供の心の状態を投射したものである。第二の段階は「図式期」であり、4、5歳から8、9歳くらいまでの時期である。この時期の絵は見たものをかくようにみえて、実は彼らの表象を表現したものである。頭足人、大小関係の無視、展開図法的な描法、レントゲン画、並べがき、重ねがき、アニメーション的描法、対象性や平面性の描法など特徴的な絵がかかれるのは、技術の未熟さによる面もあるが、むしろこの時期の子供の心理的特性と関係が深い。第三の段階は「写実期」である。8、9歳から14、15歳がほぼこの時期にあたる。図式期にみられた主観的な描画態度は薄れ、事物を分析的、合理的に観察する能力が高まるにつれ、主知的傾向が強まる。しかし、この時期が視的写実あるいは擬似写実の時期であると説明されているように、いまだ芸術性の十分な開花には至らない。
児童画は、言語的表現能力の十分でない子供が自らの心の内面を投射しながら表現したものであり、それゆえしばしば彼らの心理状況を探る手掛りを与えてくれる。また、描画活動は児童の精神衛生上に有益であるともいわれる。児童画の指導にあたっては、子供がその心の内にもっているものを尊重するよう配慮する必要があり、描画技術の指導に偏ることなく、むしろ彼らの内面の充実を重視することが肝要である。換言すれば、意欲や感動を引き出すことが指導の第一歩である。
[大林正昭]
『霜田静志著『児童画の心理と教育』(1960・金子書房)』▽『V・ローウェンフェルド著、竹内清・堀内敏・武井勝雄訳『美術による人間形成――創造的発達と精神的成長』(1963・黎明書房)』
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