日本大百科全書(ニッポニカ) 「グールモン」の意味・わかりやすい解説
グールモン
ぐーるもん
Remy de Gourmond
(1858―1915)
フランスの作家、批評家。ノルマンディーの名門の出身。カーン大学に学び、のちパリの国立図書館司書となるが、免官される。『メルキュール・ド・フランス』誌に載せた論文『愛国心という玩具(がんぐ)』(1891)の過激な反愛国主義的口調のためであった。そのころもう一つの不幸が彼をみまう。「結核性狼瘡(ろうそう)」という病が醜い跡を顔に残していって、いっそうの孤独幽閉の生活を強いたからである。
この二つのできごとと重なり合って始まる彼の文学活動は、象徴主義的風土と充実した生の現実、知的生活と感覚的生活、プラトニックな恋愛と官能的恋愛の間を、絶え間なく微妙に揺れ動きつつバランスを保った。有名な「シモーヌ」詩編を含む『慰戯詩集』(1912)、20世紀をみごとに先取りした作品『シクスティーヌあるいは頭脳小説』(1890)、そしてとりわけ傑作『悍婦(アマゾーヌ)への手紙』(1914)など、いずれも前記のテーマに沿っている。批評家としての彼は、「観念分離」なる用語を用いて、観念あるいはイメージの月並み部分を排除することを説いたが、実をいうと、例の反愛国主義的論文もそれの一例であった。批評の代表作は『神秘ラテン語』(1892)、『観念陶冶(とうや)』(1900)、『仮面集』(1896~98)、『文学散歩』(1904~13)、『哲学散歩』(1905~09)など。
[松崎芳隆]
『石川湧訳『文学的散歩』(1938・春秋社)』▽『堀口大学訳『グウルモン詩集』(新潮文庫)』