翻訳|lupus
オオカミ(狼)にくいちぎられてできたような状態を呈する慢性の潰瘍というところから由来した名前で,二つの主要な病気が含まれる。その第1は尋常性狼瘡で皮膚結核の代表的なものであり,第2は紅斑性狼瘡(エリテマトーデスともいう)という代表的な膠原病(こうげんびよう)である。ここでは尋常性狼瘡について述べる。紅斑性狼瘡については〈エリテマトーデス〉の項目を参照されたい。尋常性狼瘡の好発部位はほおや鼻であるが,ときには上肢,臀部,肛門周囲なども侵される。狼瘡小結節という黄褐色をした小結節が集合し,紅色をおびた局面となり,中央に潰瘍,瘢痕(はんこん)を生ずる。自覚症状はない。顔面では長年月の後,眼瞼外反や外鼻,口唇の変形を起こすことがある。非常に慢性で,徐々に進行拡大するが,肺結核を合併することはまれ。抗結核剤によって軽快治癒するので,現在は少なくなった。瘢痕を残し,まれにこの瘢痕の上に皮膚癌を生ずることがある。これを狼瘡癌という。
執筆者:肥田野 信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
組織の破壊の激しい慢性の皮膚病。尋常性狼瘡(皮膚結核)と紅斑(こうはん)性狼瘡(エリテマトーデス)がある。
[野波英一郎]
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