改訂新版 世界大百科事典 「ケイ化木」の意味・わかりやすい解説
ケイ(珪)化木 (けいかぼく)
petrified wood
樹幹の化石で,細胞中の内容物と水溶性のケイ酸とが置きかえられ,化石化の途中で,ケイ酸が不溶性・非結晶質の二酸化ケイ素SiO2(メノウやオパールと同じ成分)となったもの。年輪がよく保存されていることが多く,またケイ酸とともに水酸化鉄(赤褐色)などが縞状に注入されているため,いろいろな方向に切断し,表面を磨き,年輪や水酸化鉄による模様を装飾に利用することが多い。また細胞膜はよく保存されるので,そのプレパラート(横断・放射・接線断面)を顕微鏡でしらべることにより,おおよその樹種を識別することができる。一般に樹幹の部分の特徴が他の器官の特徴にくらべて乏しいため,よほどの特徴が認められない限り,正確な樹種の決定はかなり困難である。したがって,たとえばTaxodioxylon(スギ科植物の幹(材)),Palmoxylon(ヤシ科植物の幹(材))など,一般の分類上の名称のあとに-xylon(材の意)をつけ,形態属として扱われる場合が多い。
日本の中生代~新生代の地層からもかなり多産し,化石林となっていることもある。岩手県二戸郡一戸町の〈根反(ねぞり)の大珪化木〉は特別天然記念物に指定されている。ヨーロッパやアメリカでは,石炭紀の炭層にともなってケイ化木片を産する。これを炭球(コールボールcoal ball)といい,デボン紀のはじめに出現した陸上植物の移り変りのようすがよく保存されているため,初期の陸上植物の進化のようすを知る資料となっている。
執筆者:木村 達明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報