日本大百科全書(ニッポニカ) 「コッコリス」の意味・わかりやすい解説
コッコリス
こっこりす
coccolith
単細胞の植物プランクトンであるコッコリトフォアcoccolithophoreの細胞を取り巻く石灰質小盤のこと。微小な方解石の結晶からなり、その外形は、円盤状、円錐(えんすい)状、円環状、星形、五角形などさまざまである。中央部に突起やアーチ状の橋のあるものもある。大きさは1マイクロメートル以下から二十数マイクロメートル程度である。コッコリトフォアの死後、コッコリスはばらばらになり海洋底に堆積(たいせき)する。ドーバー海峡に面した崖(がけ)で、「ドーバーの白い壁」とよばれるチョーク(白亜)の地層は、おもに中生代白亜紀のコッコリスからなる。中生代ジュラ紀初頭以後の堆積岩から現世の堆積物まで産する。しかし、地球上への最初の出現は、ジュラ紀初頭以前にさかのぼる可能性もあるとされている。地質時代から現在までのコッコリス群集の変遷は、過去の地球環境を知る手掛りとして、あるいは地層を対比する手段として有効である。
[谷村好洋]