改訂新版 世界大百科事典
「コミュニケーション政策」の意味・わかりやすい解説
コミュニケーション政策 (コミュニケーションせいさく)
一般的にいえば,一定の目的・理念のもとに,社会に流通する情報の内容,伝達媒体の技術的基準や経済的条件等を法制度的に秩序づける諸方策であり,比較的新しい概念である。政治権力は元来,社会に流通する情報の内容や性質に強い関心をもち,反権力的な情報の排除(言論統制)や,世論操作に意を用いてきた。これもコミュニケーション政策といえなくはなく,その意味ではコミュニケーション政策の歴史は政治権力とともに古いといえる。しかし近年のコミュニケーション政策の概念は若干違う。これには大別すれば3種ある。第1は北欧型で,とくに1970年代以降北欧諸国では,経営事情の悪化による新聞の集中・少数化傾向を,民主社会の基本である情報・意見の多元性崩壊の危機とみて,政府がこれをくいとめるための措置を講じることをこう呼んだ。いわば狭義のコミュニケーション政策ということができよう。第2は発展途上国型で,国の主権は情報管理を含み,政府は開発計画の推進のために情報の内容,伝達媒体の配置や構造,情報流通のインフラストラクチャー(基盤)強化等を制御することができるという意味のコミュニケーション政策が重視されている。1978年ユネスコ総会で〈マス・メディア宣言〉が採択されて以後,関心を集めている。第3は電気通信政策型で,データ通信,ニュー・メディア,各種電送路,ディジタル化等技術基準を含む電気通信関連媒体の整序に関するコミュニケーション政策。現代型の広義のコミュニケーション政策といえる。いずれの場合も,言論の自由をめぐる政府とメディアの関係および国民の知る権利やプライバシーの権利との関係をどうとらえるかが重要な問題点である。
執筆者:内川 芳美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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コミュニケーション政策
こみゅにけーしょんせいさく
communication policy
一般的にいえば、社会的な情報システムや、コミュニケーション・システムの構造、規制に関する国家政策の包括的呼称。場合によっては新聞、出版、放送などのマス・メディア政策をいうことも、また、とくに有線・無線を含む電気通信システムに関する国家政策をいうこともある。近年にわかに脚光を集め、世界的にも注目されつつある政策領域である。これは、主として1960年代の後半から先進資本主義諸国において、いわゆる情報化社会が展開した過程で、電子技術の高度化による新たな情報通信の手段やシステムの開発や普及を国家的に整序する必要が高まったことによるもので、最近のコミュニケーション政策はこれに対応するものといえる。最近の情報・通信技術やニュー・メディアの発展による情報化社会の高度化あるいは情報流通の国際化を考えると、コミュニケーション政策の重要性は今後ますます増大していくものと思われる。
[内川芳美]
『ユネスコ著、永井道雄監訳『多くの声、一つの世界』(1980・日本放送出版協会)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内のコミュニケーション政策の言及
【新聞】より
…この傾向が進めば民主主義の基礎である言論の多様性が失われるとして,スウェーデンでは63年から新聞社に対する国の助成政策をとって,言論の多様性を意識的に策定する措置をとりはじめた。これは〈コミュニケーション政策communication policy〉と呼ばれ,ノルウェー,ベルギー,フランス,イタリアなどヨーロッパ各国でこの措置がとられるようになった。これに対しアメリカの新聞界では,国からの助成を受けることは同時に国からなんらかの干渉を受ける道を開くことになるとして〈コミュニケーション政策〉を批判している。…
※「コミュニケーション政策」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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